猫・本・歴史・アートなど、その日見たもの考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。
Once upon a time in 室町。
2012年10月21日 (日) | 編集 |
この垂れ幕欲しい。
サントリー美術館の「お伽草子 この国は物語にあふれている」展に行きましたー☆
会期中に大幅な展示替え(冊子のページめくりや絵巻物の巻き替えなど)があるので
少なくとも2回は行きたいなぁと思って、先月末と昨日と行ってきました。
先月はそんなに混んでいなかったのですが、昨日行ったら午前中でもかなりの混雑で
絵巻物の展示には行列ができていましたよ!
ぶらぶら美術・博物館で放送されたからかな…あの番組の影響力はパない。

展示されているのは主に室町時代~江戸時代の絵巻物や物語冊子、
絵巻を制作した関係者の日記や記録の断片などです。
一番見たかったのが、サントリー美術館所蔵「酒伝童子絵巻」!!
狩野元信(永徳のじいちゃん)の工房が制作した長編絵巻ですよーーーうわあああああ☆
酒呑童子にフォーリンラブして幾星霜、この絵巻を見る機会に恵まれず
この展覧会に展示されると知ったときはもーーテンションがやばかった!
降臨!満を持してってこのことね…とか、感慨深さもひとしおでござった。
開催初日までは会いたくて会いたくてふるえる毎日でした。つらかった。幸せだった。
そして現物は穴があくほどじーーーーっと眺めてきましたとも…。
5分近く行列とめてごめんなさい、もうしません。
いやーしかしいい物見ました。赤とか緑色とかめっちゃ綺麗に残ってた。すばらしいすばらしい☆
前期は酒呑童子が酔って寝てしまう部分までが、後期は頼光一行とのバトルが見られて
絵巻コンプリートできて幸せいっぱいでございます。
サン美のみなさまありがとうございますありがとうございます以下無限大!

あ、酒伝童子絵巻は美術館のコレクションデータベースで検索すると出てきます。
興味のある方はぜひどうぞ。

あとは南北朝時代の「大江山絵詞」とか、江戸時代の「大江山縁起図屏風」とか
狩野考信の「酒呑童子絵巻」とか、酒呑童子についての作品がいくつかあって
どの絵の前でもウロウロして挙動不審者になってました。
これらの作品、絵のモチーフや構図がほとんど似通っていて笑った。
「お伽草子 渋川本」の展示でちょうど酒呑童子のページが開かれていて、
大江山バトルが堪能できましたー。
(そういえばこの本、佐竹昭弘氏が猛烈にダメ出ししていたけど絵はかなりのものでしたよ)
それから、個人的に大発見だったのが、東博所蔵の「綱絵巻」です!
渡辺綱が大江山征伐の後、羅城門に出た鬼と対決して腕を切り落とす内容なのですが
ふわー、これって、これって、「茨木童子と渡辺綱の対決は大江山征伐の後」という
馬場あき子氏の見解とおなじ設定じゃないか!!
(綱絵巻の鬼は茨木ではなく牛鬼なのだけれども、それはさておき)
そうだったのね…「謡曲羅生門」だけじゃなかったのね…他にもあったのね…。
最高です…すばらしいですこの展覧会…(*´∀`*)。

他に気になったのは、「長谷雄草紙」ですねぇ。
菅原道真と同時代に生きていた紀長谷雄が主人公で、鬼と双六をする話です。
これもずっと本物みてみたかったんだ☆
「掃墨物語絵巻」に出てくる娘さんが、化粧品と間違えてお歯黒を顔にべったり塗って
お母さんに驚かれてる描写がおかしかったです。
「地蔵堂縁起絵巻」と「浦島明神絵巻」と「天稚彦物語絵巻」の大スペクタクルっぷりには
ひたすら感心しました。スターウォーズとか目じゃないわ…。
「鼠草紙絵巻」のかわいいことかわいいこと☆声が聞こえてくるような物語でした。
擬人化は日本の文化ですな、うむ。
あと「しぐれ絵巻」っていう、28歳の女性が描いた絵巻があったのですが
「依頼されたから描いたけど、1回見たら火にくべて燃やしちゃってください(意訳)」
とか、そんな後書きがついていました。
いやー、しかし、燃やしてくれと書いても、燃やしてもらえないものですね…そりゃそうだよね…。

それから、付喪神絵巻や百鬼夜行絵巻などの、いわゆるオバケ物~♪
展示室入口にカーテンがあって、百鬼夜行絵巻の妖怪たちの影が投影されていました☆
なんて粋な演出なんだ。
百鬼夜行絵巻は過去に見たことがありますが、付喪神絵巻は初めてでした。
小さなものたちが絵巻の中を闊歩する様子はとても微笑ましいです。
展示室の最後に「調度歌合」という作品の現代語訳が壁に貼られていまして、
くるりと後ろを向くと文机や唐櫃や箪笥などの調度品展示があり、
ひとつひとつにマンガの吹き出しがつけられ歌が記入されていて
まるで彼らが歌を詠んでいるかのような演出でした。
夜な夜な、こういう家具がこっそり歌合や双六に興じているとか…。
わー何それトイ・ストーリーですかナイト・ミュージアムですか!
人の見ていないところで物たちが動く、というのは昔からのロマンですな。ステキすぎる。


あと、昨日は美術館のホールで「戦国時代のお伽草子絵巻流行と土佐光信」と題して
高岸輝さんの講演会がありましたので、それも聴いてきました♪
配布されたレジュメには絵巻の詞書や日記の抜粋があり、しかもかなりの量だったので
あれちょっと難しいかな?と思ったのですが
蓋を開けてみたら全然そんなことはなく、むしろポップでとても面白かったです☆
基本的に室町~戦国時代にかけての絵巻物はお偉いさんだけが見られるもので
彼らがどんな風に絵巻物を作ったり読んだりしていたか、とか
その内容について解説してくださいました。

個人的に拍手を送りたいと思ったのが高岸先生のハイレベルな想像力(笑)。
中でも先生が足利義尚・後土御門天皇・三条西実隆・土佐光信の4人を語るときの生き生き感はすごい、
こりゃ脳内で相当強い存在になってるんだろうなー。
義尚が後土御門天皇から絵巻物を借りたときの記録について
「彼は一度に26巻借りて4日で25巻返してます!
現代で言えばDVDを26枚借りて4泊5日で見るようなもんです」という例え話をしてくださって笑っちゃった。
しかし三条西実隆という人、わたしの中ではものすごく面白いおっちゃんのイメージだったのですが
今回の講演を聴いて、どちらかというと苦労人っぽいイメージにシフトしちゃったなあ。
義尚が天皇に「せんせいもっとえまきものがよみたいです」とかおねだりして
天皇が「このまえのおうにんのらんでえまきものがぜんぶもえてしまいました。
いまあたらしいやつつくらせてるからまっててね」みたいな返事をして
実隆は天皇から「早く新しい絵巻物作ってよー読みたいんだよー」とか依頼されて
絵師の光信に絵を頼んだら予想以上に面倒くさい奴で
「絵は神と一体化して描くんだ!」とか、よくわからないこと言われたりして
おいちゃんもうどうしたらいいかわかりません、みたいになっちゃう感じ。

一番楽しかったのは、光信が実隆から肖像画を依頼されたときに描いたスケッチについての
先生の史実に基づく想像です(笑)。
そのスケッチは実隆の持ち物である本に挟まれた状態で発見されたそうですが
どうも実隆が「これオレなの?ちょっと生々しくない?」とか
写真写り悪いよ的なノリでダメ出しをしたことが実隆の日記に残っているようなのです。
歴史上の人物の肖像画を見慣れた人はおわかりになるかと思いますが、
肖像画に描かれる人ってだいたいスッキリした顔をしていますが
光信が描いた実隆のスケッチは雑然とした、いわば実隆本人の顔に限りなく近い、
リアルなスケッチだったわけです。
(例えるなら、喜多川歌麿のつるりとした美人画が大流行していた江戸時代後期に
東洲斎写楽の生々しい絵がポンと投げ込まれたような感じでしょうか)
なので、実隆は「フツーに描いてくれないなら作るのやぁめた」とかふてくされて
スケッチを本に挟んでそのまま忘れてしまったのではないか、
それが時代を経て、数百年後の現代に発見されたのではないか…という、
何とも生き生きとしたお話でありました。あー笑った笑った。

室町~戦国時代にかけての絵巻物は、必ずラストに何かしらの教訓や往生譚があるそうです。
今回の展示を前期後期通してみて、言われてみればそういうものばかりだったな…。
それらは日常ではなく神話、ファンタジー、擬人化、オバケなどの題材で語られていて
しかも一般庶民ではなくお偉いさんたちが喜んで読んでいたというのが
(お伽草子が市民に広まるのは江戸時代に入ってからです)
この時代の絵巻の特徴です…と、先生が締めくくっていてふむふむと思いました。

あとこの講演会、1時間半という時間に対して先生がしゃべりたい内容の方がずっと多い内容だったらしく
終始かなりの早口でしゃべってらしたように思います。
土佐派の2代目である藤原光益と同時代に生きていた足利義満と一休宗純について先生が
(そんなに余裕のない進行ペースであるにも関わらず)、
「アニメの一休さんはとんちで義満をさんざん負かしてますね。
もともと一休さんは天皇の子どもなので別にいいんですが、まぁそれはおいといて」と
すごい早口でサラリと無関係なコメントをつけていて
会場でも笑いが起きていたんですが、今思い出してもちょっと笑ってしまう(^ ^)。
結局時間オーバーしてたしな~でももっとたくさんお話聞きたかったです。
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