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パリとプラハのリトグラフ。

2013.04.01 23:33|文化・美術
夢想。
森アーツセンターギャラリーで開催中の「ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展」に行ってきました。
ミュシャは以前から好きなアーティストで、画集も持っているのですけど
展覧会に来たのは初めてかも。
単に機会がなかっただけですが、今回はたまたま最寄駅で展示ポスターが目についたのと
チラシやHPで内容を見たらかなりのボリュームだったので行ってみました。
…結果は大正解でしたねー( *´艸`)行って良かった!

展示品は広告、チラシ、ポスター、本の挿絵、油絵、アクセサリーなど多岐にわたりますが
一番多かったのはやはり、リトグラフ。石にインクをつけて印刷する版画です。
ミュシャといえば花&女性の版画!というくらい、もはや彼とは切っても切れないリトグラフですが
これ、日本の浮世絵とおなじで保存がとても難しくて
財団でも展覧会以外では表に出さない貴重品だそうです☆
そんな大事なものをこんな遠くの国まで運んで来て見せてくださるのですな。胸熱。

四季(春・夏・秋・冬の擬人化)や、宝石(トパーズ、ルビー、アメジスト、エメラルドの〃)、
四芸術(ダンス・絵画・詩・音楽の〃)、月と星(月、明の明星、宵の明星、北極星の〃)など
大好きで画集で何度も見た作品がフルサイズで目の前に!
実物とお近づきになれるのが展覧会の醍醐味よね…(´ー`)。
俳優サラ・ベルナール主演「椿姫」「ジスモンダ」のポスター、装飾資料集、舞台衣装デザイン、
チェコの民族衣装を着た女性たち、「主の祈り」挿絵、フリーメイソンのゴブレットなどなど、
平面から立体に至るまでただただオシャレで華やかできれい。
ミュシャの作品を見ていると気持ちが明るくなるなあ。野原に花が咲いていくみたい。
展覧会ポスターにもなっている「夢想」もありましたが(↑の写真参照)、
これも大きい絵なんですね。
この独特のポーズが好きです。少し力が抜けているけどバランスのよいポーズ。美。

ミュシャは作品のほとんどがポスターやチラシやパッケージということもあって
一点ものの絵画と比べてなかなか残りにくい側面もあるけど、
版画は大量生産できるので一般家庭にもお求めやすい価格で売られていたと会場の解説にあって
えっ何これ浮世絵みたいじゃん!と思ってテンションあがりました♪
彼がよく花と女性を描いているのも、美人画と花鳥画みたいじゃないかって。
石鹸やビスケット、水、切手、香水、自転車、宝くじ、パリ万博のディナーのメニューの表紙など
いわゆる消耗品と呼ばれるものに絵が使われているところをみると
ますます立ち位置が似ている気がしてくる。
あれだ。江戸時代の日本の町絵師が、浅草で売られるお菓子の袋のパッケージに錦絵を描いて
お菓子を買った子どもたちがわいわい食べて、食べ終わったら袋は捨てられてしまうけど
数人のうち1人は「この袋の絵きれいだからとっておこう」って思う、みたいな感じ。
パリっ子も江戸っ子のような気持ちでミュシャの絵を眺めていたのでしょうか。
石鹸のパッケージが連作になっていたら「このシリーズ全部そろえたい!」って思っちゃうとか(^ ^)。

版画のデザイン画、下絵、スケッチ、習作などもありました。
ミュシャの習作は柔らかさが感じられていいですね~。
彼は割と骨太なタッチなので、下絵の筆圧も強くて太かったです。
それでも柔らかい感じがするのはなぜでしょう、柔らかい鉛筆を使っているのかな…。
油絵も良かったです。
自画像が、ふわっふわの髪に髭をくるんと巻いてオシャレさんでしたね。
光の当たり方とか白の使い方が、印象派の色彩に似ていました。
娘をモデルに描いた「ヤロスラヴァの肖像」の目つきにドキリ。
何かを見透かすような視線と、色気と妖しさ。頭に巻いたスカーフもすごい質感です。
「百合の聖母」がとても大きくて美しかったです。
ミュシャが描くと宗教画もこうなるんですね。光が燦々と差し込んでいるようで綺麗だった。

ミュシャのチェコ民族衣装コレクション、かわいい~。
大きく膨らんだ袖にフリル、胸元の色遣い、すべてがパーフェクトなデザインです。なにこのセンス。
特筆すべきは刺繍!刺繍の模様のひとつひとつです。細かすぎ&美しすぎます。
職人のすごさは洋の東西を問いませんね。尊敬。
ミュシャや家族、友達、身近な風景、絵のモデルさんなどを写した写真もありました。
ミュシャ本人の写真はもう、自画像から抜け出たような人がそこにいましたね~。
描く絵のままの人だなぁと思う。
そしてアトリエがすごい。棚も床も物が積まれて、まさに画家の部屋って感じ。
パンツ一丁でミュシャ家のピアノを弾くゴーギャンに笑った。2人は気兼ねない付き合いだったらしいです。

ミュシャのいた時代は芸術がめまぐるしく変化していて、
その中から浮上してきたのがアール・ヌーヴォーで
メゾン・ド・ラール・ヌーヴォーという画廊まで存在していたことも初めて知りました。
アール・ヌーヴォーはもともと「新しい芸術」の意で、従来の様式から脱し花や植物など曲線を用いて
絵画性よりも装飾性を追求した芸術運動ですが、
このときにミュシャがその画風で大活躍したために
ミュシャの作風(ミュシャ様式というらしい)とアール・ヌーヴォーが同一視されるように
なっていったのだそうです。
そうかそれでわたし、アール・ヌーヴォーと聞くとミュシャの絵を連想していたのか…。
彼のデザインって線対称と点対称をうまく使いながら曲線だけで描かれていてすごいなと思います。
既出のモチーフをいくつも組み合わせて見たことのない絵に仕上げてしまう。
デザインってこんなにバリエーションあるんだよ、という声が聞こえてきそうです。むむ。

ミュシャは晩年を故郷のチェコで過ごし、連作「スラヴ叙事詩」を制作しますが
今回はその解説が映像やデッサンとともにありました。
神々の時代から人の時代へ、そして第一次世界大戦に至るまでの
スラヴ民族の栄光と苦難の歴史を描いた連作です。
縦6メートル・横8メートル×20枚という大作を日本まで持ってくるわけには
さすがにいかなかったようですが、映像解説だけでもかなりの迫力と雰囲気。
完成まで約18年。リトグラフではなく油彩。ミュシャ様式と呼ばれた画風も封印して
ただひたすらに絵筆を走らせたかのような印象を受けました。
故郷が大好きだったんだな…。
第一次大戦やチェコスロバキアの独立という背景もあって、
ミュシャはこの連作をどうしても故郷で描きたかったようで
資金援助を得た後ボヘミアのお城を借りてスタジオにしています。もはやスケールが違う。
(ちなみに完成した20枚はすべてプラハ市に寄贈されている)
チェコスロヴァキア独立10周年記念の年に描かれたリトグラフにはいくつものエンブレムが縫い込まれ、
誰もが宗教や民族や文化等で差別されることなく新しい時代が平和でありますよう、との
メッセージが込められているようでした。
自分の身の回りや社会が荒れているとき、芸術家は精力的に活動することが多いけれど
ミュシャも例外ではなかったようです。

ほかにもプラハ市民会館の壁画の習作、ステンドグラスのデザインや写真、
未完の絶筆「理性の時代」「叡智の時代」「愛の時代」下絵などが展示されています。
会場にはスメタナの「モルダウ」がほのかに流れていました。

「わたしは芸術のための芸術をつくるのではなく、大衆のための制作者でありたい」と言ったミュシャ。
彼の絵は美術館や博物館ではなく、街頭やショップ、劇場、新聞、雑誌、公共の建物など
常に大衆の、特にスラヴ民族のそばにあったのだなあとこの展覧会を見て思いました。
世界には美しいものがあるのだと、それをみんなに見せるのだと懸命だったのかもしれません。
彼には繊細なイメージがあったけど情熱家でもあったのだと感じました。
行って良かった。うん。

チェコの味。"
東京シティービューのマドラウンジスパイスでいただいたチェコプレート。
ミュシャの故郷のランチです。
しっとりした白パンと、とろりとしたマーマレードがおいしかった!
もしチェコに行くことがあったら絶対さがして食べます。



五月晴れ。※クリックで大きくなります
「貫之1111首」古今集編その10。9はこちら
貫之、忠岑からのお香と躬恒からの薬玉を持って、友則のお見舞いに来ました。
友則は1月に大内記に昇進しましたが、体調がすぐれず出仕できずにいます。

友則「牡丹ちゃん、今年も来てたの」
貫之「ああ。昨日帰った」
友則「賑やかだったでしょう」
貫之「いつものことだ」
友則「そうだね。…"ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ"」
貫之「いい歌だな、もーらいっ」
友則「ええー」
貫之「オニイサン、歌人になれるよ」
友則「なーにをおっしゃるんですか」
貫之「ははは。歌が足りないんだ、ちょうどいいや」

この頃は歌合が増えてきていましたが、世の文学の中心はやはり漢詩でした。
『古今和歌集』には130余人が入集していますが、その中で公卿はわずか2人です。(うち1人は時平)
編纂のために、歌はいくつあっても足りなかったのでした。
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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

NoTitle

ミュシャ、いいですよねぇ〜
あの柔らかい線がいいです。
春夏秋冬シリーズは特に好きです。
いつ見ても古さを感じさせない、
女性が活き活きしていながら生臭くない。
いいですねぇ

二人の会話がとてもいいなぁ〜
漢詩って難しいから、庶民には遠い存在だよねぇ〜
昔、NHKで江守徹がナレーターの漢詩紀行。
アレ好きでしたわ。
炭焼き職人が働いても働いても貧しいみたいなうら寂しい詩
じんわりしました。
漢詩ってじんわりと身に沁みる詩が多い気がします。


↓吹っ飛び画像
旦那が面白いと言っていたので見たかったのですが、その内、忘れていたのでラッキーでした。
あのジャンプ力は若い時ならでは、いい記念になりますねぇ。

Re: NoTitle

> ぴゆう様

いいですよねー!あのタッチがとても好きです。
ミュシャの曲線ってなんであんなに優雅なんでしょうね。
> 春夏秋冬
わたしも大好きです。季節の神様を造形した感じがします☆

遠慮のない2人です(笑)。
> 漢詩
慣れてないと読めないですね( ̄▽ ̄;)。
漢詩紀行、たまに見ていましたが、わかったりわからなかったりでした。
> 漢詩ってじんわりと身に沁みる詩が
ああ、わかります。
特に中国の詩人の詩はじんわりきます…。杜甫とか王維とか…。
李白や白楽天は楽しそうだなって思いますね。

> 吹っ飛び画像
良かったです、面白いですよね☆
みんな楽しそうでいいなあと思います。わたしももう、ああいうジャンプはできないなあ。
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ゆさ

Author:ゆさ
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