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始まりと終わり。

2013.04.19 23:24|絵本・児童書
伊藤遊さんの『狛犬の佐助 迷子の巻』を読みました。
小さな神社の境内にいる阿吽の狛犬と、迷子の犬を探す青年と、どんぐりが好きな男の子の
現代が舞台のハートフルストーリーです。
獅子の「あ」には石工の親方の、狛犬の「うん」には弟子の佐助の魂が宿っているのですが
彼らが生きていたのが150年前というのが個人的にツボ♪
ちょうど幕末ではないかー。
別に歴史上の人物が出てくるわけでもないんですけど、なんかそういう設定って好きですね。
ストーリーも現代の情愛とお江戸の人情がまぜまぜです。ほっこり。

親方と佐助は絵に描いたような職人気質の師弟ですね。
佐助がいろいろ話しかけて、親方が「しょうがねぇな」って言いながら相手してる感じ(^ ^)。
「あ」を彫ったのは親方で、「うん」を彫ったのが佐助なので
彫った人の魂がそのまま残ってしまったわけで、
しかも神社の宮司さんは親方の「あ」の出来はすばらしいと褒めて
佐助の「うん」には首をかしげてしまうという。
親方の名に傷をつけたとヘコむ佐助を
「おれよりいいものを作ろうとやっきになってたくせに」と励ます親方がイケメンすぎてつらい。
一方、よく神社にどんぐりを拾いにやってくる少年を見て
「ようちえん、て、寺子屋みたいなものですかねえ。何の勉強をしているのでしょうねえ」
「そりゃやっぱり論語だろうよ」
「それって難しいんでしょう」
「難しいに決まってらあな」
のやりとりが呑気で微笑ましい~。
この人たちきっと、学問とか出世とか幕末の動乱とかどこ吹く風で
仕事に没頭していたんだろうなあと思います。
手には道具、目の前には石があるから彫って当たり前ですみたいな、愛すべき仕事バカ。粋。

大人には聞こえない佐助の声を、6歳の男の子が聴いたあたりから物語が急展開していきます。
この男の子の機微の描写がみごとでですね…。
自分に頼み事をしてくる佐助に内心びくつきながらも話を聞こうとするというか、
声が聞こえちゃうから耳を向けるしかないというか、
頼まれ事は断れない性格なんだろうなっていうのも伝わってきて
伊藤さんの筆が冴えているなあと。
心の動きを描くのが本当にうまい作家さんだな…。
岡本順さんのイラストも素敵です。
男の子と親方以外に自分の動く姿が見えていないのをいいことに、いたずらし放題の佐助と
佐助の笑った顔を見て、いーってしてる男の子がかわいい♪

(ところで、あまり子どもに話しかけるのを好まない親方に
「どうせ7つになったら、みんな忘れてしまいますよ」と佐助が言っているのは
"7歳までは神のうち"というやつですね)

青年が行方不明の飼い犬を探すシーンを読んでいるときは
「となりのトトロ」でいなくなったメイをサツキが探し回るシーンの音楽が脳内再生されていた。
そういえばあの音楽のタイトルも「まいご」でしたね…。
逆に、親方が佐助を探し回るシーンではネコバスの音楽が爆音で再生されました(笑)。
だって親方ったらものすごい全力疾走なんだもの!
ほとんど馴れ合いのない師弟の、ふと見せる思いやりとかやさしさに涙しそうになるのも
この本の魅力のひとつだなあと思います。
「おいら、まだ見たことのないもののことを考えるのが、大好きなんです」
「だからおまえだったんだよ」
の会話がじーんときました。師弟愛っ…!

ところで副題がついてるってことはシリーズと考えていいですか伊藤さん…!
佐助を助けてくれた大野神社の狛犬たちの話とか
(あの人たちたまらんですよ、何たるイケメン)、
親方と佐助が出会った狐の夫婦の話とか、もっと読みたいです。

伊藤遊さんの本は日常とファンタジーがうまく連続していて好きですねえ。
日常と非日常の間を反復横跳びするのが全然珍しくないというか、
どっちも同じ空間に存在しているからまあ当然こうなるよね、っていうか、くらくらする。
伊藤さんの本を読んでいると、ふとしたときにそういう瞬間が見えてしまうような感じがします。
これ癖になりますよ…。
『つくも神』や『きつね、きつね、きつねがとおる』は正にそういう本だったし、
『鬼の橋』も行って帰ってくる話だし。
『えんの松原』は異性装ものとして大変すぐれた本だと思いますけれども、
あれも異界を抱えた住居の中で生活する人々の話だしな…。


あ。狛犬が出てくる本といえば柏葉幸子さんの『狛犬「あ」の話』も面白いので
興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
狛犬の話も泣けるのですが、主人公のおばあちゃんがすごくかっこいいのです。
孫に敬語で接するおばあちゃんてステキ!と思ったのは『西の魔女が死んだ』以来だなあ。
西魔女のおばあちゃんも背筋が凛と伸びてそうな雰囲気をかもし出していて大好きだったりします。
(サチ・パーカーの映画はまだ見てませんけども…いつ見ようかな…)



tsurayuki69.jpg※クリックで大きくなります
「貫之1111首」古今集編その14。13はこちら
午後の撰所。ふらふらになってやって来た貫之の顔を見て、びっくりの忠岑と躬恒。

忠岑「うわ、すげえ顔、寝てねぇの?」
貫之「うーん…」
躬恒「大丈夫?」
貫之「歌が足りない。勅からもうすぐ1年なのに、900ちょっとしかない」
躬恒「でも」
貫之「こんな計画、万葉集以来だぞ。後々まで生きる歌集を作るつもりでやってる。手は抜かない」
躬恒「体壊したらどうするの」
貫之「壊さない」
躬恒「だめだよ、最後まで無事にやらないと。帝や大臣も無理するなって仰せだったし、友則さんだって」
貫之「時間がないんだよ。あいつ、大内記辞める気なんだぞ」
躬恒「……」
貫之「おれたちは出来上がりが見られて、あいつは見られないなんて、そんなのあるか」
躬恒「……」
貫之「ごめん」
躬恒「……」
貫之「八つ当たりだ」
躬恒「こっちこそ」
貫之「……」
躬恒「ごめんね」

万葉集以来の歌集プロジェクト、撰者のプレッシャー、迫る期限、そして、友則の体調。
貫之にとっても、躬恒や忠岑にとっても、すべてが初めてのことばかりです。
みんな不安でいっぱいなのでした。
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テーマ:児童書
ジャンル:本・雑誌

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Author:ゆさ
猫に熱烈な愛をそそぐ本の蟲
歴史やアートも溺愛中
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