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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


空も飛べるはず。

  1. 2014/03/14(金) 23:44:29_
  2. 舞台鑑賞
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
白塗り☆
新橋演舞場にてスーパー歌舞伎II『空ヲ刻ム者 若き仏師の物語』を観てきました…。
市川猿之助率いる澤瀉屋一門+佐々木蔵之介+福士誠治+浅野和之による完全新作歌舞伎です…。

観終えて。

な、な、何じゃありゃーーー!!!

ヤバすぎてぐうの音どころかヒャーもぴゃーも出なかったよ何あれ反則だよ!
良かった??良かった!!もうマジやばかった超めちゃめちゃすっげーーーーー良かった。
観たの先週なのにまだ興奮冷めない。
色んな人の感想が気になってネットやTwitterで検索して
「いいよね!」「すごいよね!」「はじけてるね!」「ド派手よね!」とか共感する日々で
未だにやめられない。
ほんとにほんとに良かったので今からでも気になる方は行くべき…!

三代目市川猿之助(現猿翁)が始めたスーパー歌舞伎に
今度は四代目が新作をひっさげ現代劇の脚本家や俳優まで引きずり込んできたわけですが、
わたしは先代のスーパー歌舞伎を見ていないので比べることはできませんが
ご本人が「好き放題に作った」と言っているとおり、完全に四代目の感覚で現代テイストもギャグもあって
色んな意味で"今"の歌舞伎っぽくて面白かったです。
上演時間が4時間40分と聞きましたけど歌舞伎に慣れた身にはさほど長くも感じず、
セリフは早口だし、暗転や、廻り舞台や振り落としの場面転換はスピーディだし
二胡やギター、雅楽など音楽もロックだし
後半はテープが飛んできたり立ち回りあり紙吹雪ありでド派手だし、ちゃんと全員に見せ場もあって
何より楽しくてあっという間!
全3幕なのですがどの幕も「え?もう終わり?」と物足りなく感じるほど中身が詰め込まれていました。
猿ちゃんと蔵さんのエネルギーすごかったし、笑也さんと春猿さんの色気200%だったし
笑三郎さんと猿弥さんの安定感パないし右近さんは拝まずにはいられない。
門之助さんのワルさに惚れそうだったし福士くんかわいかったし浅野さんのオババは友達になりたい。
あー思い出すと興奮する。スーパーな歌舞伎でした。

以下、異様に長い&張り切ってネタバレしていますのでこれからご覧になる方ご注意ください。
大丈夫な方はクリックしてどうぞ☆↓
 


わたしにとっては去年の歌舞伎デビュー以来、ほぼ1年ぶりの演舞場です。
あの日は大雪だったなあとか、まだ歌舞伎座のリニューアルオープン前だったなあとか思い出しながら
お弁当を買って、さてイヤホンガイドはいずこと探したのですが
貸出場所が見つからず。
でも客席の誰もイヤホンつけてないし今回はないのかな、と首を傾げつつ席につきまして
蓋を開けたら口上もセリフも全てが現代語でした。
時間や場所、人物の立場や背景、仏師が主人公のため仏像の寄木造、一木造の解説もセリフの中でしてくれて
なるほど、これは要らないわけだ('ω')。

舞台はむかしむかし(寄木造全盛期だから鎌倉時代かな?)の日本で、
ある山の村に住む仏師十和(猿之助)と領主の息子一馬(蔵之介)は幼なじみで仲良しだったのに
十和は仏教が政治に利用される状況にグレて仏像造りをやめちゃった!
一馬は民衆のための政治を志して上洛したもののお約束的展開で権力に取り込まれちゃった!
都人や村人や盗賊や仏像なんかも巻き込んだ権力vs民衆バトル、やがて2人も再会するよ!
どうなる十和、どうなる一馬、あわやこの世は大混乱~~!
とか、そんなストーリーです。
政治と宗教、人の生き方等、どうかすると理屈っぽく終始してしまいがちなテーマを
前川知大さんが観念的な脚本に組み立てていました。
以前に蔵さんと前川さんが一緒に現代劇のお芝居を作って、そこに猿ちゃんも参加したことが
今回の前川さん起用に繋がっているそう。
(そのとき猿ちゃんは蔵さんに「歌舞伎出てくださいよ」とオファーを出していて
蔵さんはいいよーと適当に答えたらしいんですが、そこに前川さんも同席していたらしい)
猿ちゃんと蔵さんはオフでも仲良しで、親友設定は両者のファンとしてはとっても嬉しいです。
あと今回は蔵さんが歌舞伎初挑戦だからというのもあるけど、
ニュースとか見てると猿ちゃんの現代劇チームへの甲斐甲斐しさがいつも以上に際立っている気がする。
蔵さんのメイク作ったり、福士くんにやさしく言葉かけたり、浅野さんとじゃれ合ったり
A-Studio出演中に「どうしよう…全然まとまってないのに(みんなを)置いてきちゃった…」て心配したり
お稽古初日がちょうど蔵さんの誕生日だったのでサプライズお祝いとかやっちゃってるもんね!
うおおおほんと猿ちゃんのこういうとこ大好きだ。

口上。
裃姿の出演者たちがズラリと叩頭ポーズにてご登場。
ここは、「~でござりまする」の語尾が続いてああ、歌舞伎を見に来たなあって感じ。
「伯父の精神を継承しようとセカンドを作りました」との猿之助の口上に始まり、
先代からのスーパー歌舞伎皆勤賞の人(門之助さん笑也さん)、
スーパーを観て歌舞伎の門をたたいた人(弘太郎さん)、84歳で挑戦の人(寿猿さん)、
澤瀉屋一門の歴史を感じてジーンときました。
春猿さんが「ちょっと言えない役をやります」とおっしゃって楽しみさ倍増。
現代劇組もがんばってましたよ。
福士くん「演舞場は僕が初舞台を踏んだ場所。ここで歌舞伎に出られるのをうれしく思います」
蔵さん「前に僕の劇に出てもらって『次は兄さんが歌舞伎に』と言われ社交辞令で『いいよ』と答えたら
こんなことになっちゃって、いま背中が汗びっしょり、顔面蒼白です(白塗りだから)。
皆様のご声援次第では宙を駆けるかも(笑)」って笑わせてくれました。
締めはお2人ともちゃんと「ご支援お願い申し上げたてまつりまする~~」って歌舞伎風におじぎ。
歌舞伎に対する誠実さがありました。よかった。
面白かったのが浅野さん。なんと、口上がありません(笑)。
口上が終わってからの引っ込み、浅野さんだけ置いてみんなスーッと下がっていっちゃうんです(笑)。
客席から笑いが。

実は浅野さん、幕が上がった時からすでにお芝居を始めていらしたのでした。
口上で共演者から浅野さんの番ですって言われても「あたしゃ鳴子(役名)だよ」とかツンツンして
みんなが下がった後まったくやんなっちゃうねぇってぼやくと
そこへ大道具さんたちが出てきて「浅野さん邪魔ですよ」とか壁動かして舞台セット始めちゃって
「ちょっとどいてください」って浅野さんを畳からついっと転がり落としたり
裃をビリビリ脱がしたり(これで鳴子の衣装に早変わり)結構容赦なくて
なんだよーって浅野さんが怒っても涼しい顔してなさる(笑)。
たぶん演出なんだろうけど面白かった。

現代劇チーム違和感なさすぎてすばらしいです。
浅野さん(屋号:斎高屋)は鳴子という祈祷師役で、狂言回しも務めなさいます。
湯婆婆みたいなカツラ被ったり、派手な布を無造作に重ね着して雰囲気たっぷり。
彼女が要所要所で説明してくれてかなり内容がわかりやすくなっていましたし、
何せ浅野さんだからやることなすこといちいちウケる(笑)。
福士くん(屋号:相模屋)の伊吹がかわいくて萌えはげそうだった…。
十和の弟弟子役で、兄弟子の気持ちを誰よりも理解していて
十和をかばって腕を斬られるシーン、いい仏像を作ってくださいねって十和に語りかけるシーンでマジ泣き。
すごく難しい役どころだったと思いますけどすばらしかった。
本人ブログにも記事がありますが毎日幸せだそうです、よかったね~。
そして、めあての蔵さん(屋号:笹倉屋)はたっぷり堪能しましたとも☆
赤い衣装に白塗りメイクで、ポスター披露のときも思ったけどすごくお似合いで
しゃべり方も現代劇風で立ち振る舞いも堂々としてました。
というか、決して身分の高い役ではないはずですが主演のためかものすごく衣装が派手で
村人→使用人→役人とキャリアアップするにつれお着替えもいっぱいあったし
所々がんばって歌舞伎風の言い回ししたり見得を切ろうとしててかわいすぎ。
十和との友情と、都の上司からの無茶ブリと、村人たちからの要望の間で葛藤する姿を丁寧に演じてらした。
みんな歌舞伎初参加とか信じられない。

オモダカーズも頼もしいですよ!
主演の猿ちゃんも蔵さん以上に衣装が派手で、村人たちとのシーンで目立つ目立つ(笑)。
「おれだったら印相をこう彫るな」ってグッジョブやピースとかしたりしながらも
仏ってなんだろう、生きるってなんだろう、自分には何ができるだろう…と悩む
若くて思春期まっさかりで才能を持て余しぎみな仏師を熱っぽく演じておられました。
脚本がたまに理屈っぽいんですけど猿ちゃんの台詞には心がこもっていて、違和感なく聞けたし
やっぱり彼が一番よく通る声で張るとこ張ってて力強さを感じました。
笑三郎さん、十和の母菖蒲さん、綺麗でやさしくて、亡くなってからも十和を心配していて
でも1回だけおっかない声出してビクッとした(^ ^;)。
寿猿さんの貫録たっぷりの和尚様もすてき。
門之助さんの長邦は最初はいい人っぽいんですけど、本性はクレバーでかっこいいワルです。
イケメン貴公子がワルやるとすさまじいね!
春猿さんの時子も美しい美しい、蔵さんを誘惑するシーンはドキドキがとまらないよ!
最後はハートの女王様のようでしたけど(笑)。
めずらしく悪役のお2人…。
笑也さんの双葉さん、ちょっと出てきた瞬間ハッとする美しさと凛々しさ。かっこよかったです。
猿弥さんの吾平はゴンザみたいな、お頭思いの部下ですね。
そして右近さんの九龍。色んな意味で超~~~~おいしい役です!とっても素敵な人だった。

父親が役人のために仏像を彫っているのを苦々しく思う十和に
村人の窮状を役人に訴えるも一蹴されてしまった一馬が別れを告げに来るシーン、
お互いの才能をすごく大事にしているくせに肝心の部分がすれ違ってしまっていて
うおお~そうじゃないんだ十和~そうじゃないんだ一馬~とかモダモダ。
「才能を無駄にするな」とだけ伝えて花道に去って行ってしまう一馬。あああ一馬~。
なんか1幕からクライマックス感。
一馬が出ていったあと、菖蒲さんが亡くなるのですが演出にびっくり。
菖蒲さんが鮮やかな衣装をするりと脱いで白装束になって
突如として舞台のセリからドライアイスとともにゴウンゴウンと現れた大扉の向こうに消えていくというもので
おおおおこりゃすげえってなった。
母親のことを父親に伝えに行っても、父親が涙ひとつこぼさず仕事ばっかりなのでカチンときて
役人に献上するはずだった仏像をガシャンと足蹴にしてしまう十和に
切ないやら若さを感じるやら、なんかねーもう抱きしめたくなっちゃったよ!
怒った役人がてめえ腕出しやがれーぶった切ってやるとか言い出して
やってみろ清々するって売り言葉に買い言葉な十和の前に、弟弟子の伊吹が進み出て
「十和さんの才能はつぶしちゃだめです」って自分の両腕を出して、十和が止めるのも聞かずバッサー…。
ぎゃああああああ(;´Д`)
激怒した十和は鑿を振りかざして役人に斬りかかり、ここでやっと歌舞伎らしい殺陣が!
照明もツケ音の効果も抜群で、正直、ここまでセリフ多くて眠かったけどバチッと目覚めた(笑)。
てか、十和、強すぎ…( ゚Д゚)たった1人でみんな倒しちゃったよ。
ジルを殺された時のナウシカのようだと思いました…怒りに任せた動きってすばやくておっかない。
で、役人を手にかけたとあっては大事、村から出て生き延びなさいと父に言われて
十和は村を出て行ってしまいます…。
なんか1幕からクライマックス感!

美味なの。
本日のお弁当。煮物たくさんでおいしかったー。


1幕での説明を踏まえたせいか、2幕目から徐々にテンポのいい展開に。
十和を探しに都へやって来たという伊吹とオババ。
「腕いたいよー(今思えばこれはフラグだった)」「我慢しな。えーと今あたしたちはね…」←観客への説明
「オババ、さっきから何しゃべってんの」「独り言だよ」←観客への説明
珍道中(笑)。
一方、都にやって来て色々がんばったらしく、長邦という貴族に仕えるようになれた一馬。
しかし宴の席で歌も詠めず舞も舞えず貴族たちにバカにされたり
(ここの舞で写楽の江戸兵衛みたいなキメ顔してた)、
時子さんから誘惑されたりしてがしがしMP削られております。よくあるパターンだ。
ここの蔵さんの反応がいちいち笑えます。「はい?」「ちょ」「マジっすか」「マジむかつく」とか
くだけてて楽しい(笑)。
でも長邦から「民を苦しめる摂関家を一緒にぶっつぶそうぜ!(その後オレが君主ね←オフレコ)」と誘われて
「ハイ!」と目を輝かせて答えちゃう一馬。
かわいい(*´ω`*)若者って感じかわいい。

一方、すっかりやさぐれた十和は各地の仏像を壊して回った罪で牢獄に入れられてしまうのですが
同じ牢には隠し田の罪で投獄された農民たちが。
十和が亡くなった喜市の兄のために梵字を彫ってあげるのがやさしいですね…。
(Twitterで大日如来の梵字ではないかと言っている方がいた)
ここで十和に興味を持って声をかけてきたのが盗賊首領の双葉さん!笑也さんーーーかっこいい!
本当は身分の高い生まれで今は盗賊の首領でただならぬ気品と頭脳をお持ちの見た目20代女性を
それはもう見事に演じてらして好きになりそうでしたよ。
ってか、笑也さん主役よりお着替え多かったね?はああ、どれもお美しい…五十代男性の女子力パない。
そこへ猿弥さんたち部下が双葉さんを助けに牢屋を壊しにやって来て、
役人とバトルしてエグザイルして、ついでに一緒に脱獄する十和。
盗賊団のアジトで繰り広げられる宴会やダンスもよかったですよ~歌ったり舞ったり
セットが2階建てになっているのでヒョイッと上にジャンプしたり降りてきたり。
みなさん軽やかだ。
夜な夜な身の上を語り合う十和と双葉がじんわり素敵でした。

一方、伊吹とオババですが、伊吹が腕の傷が悪化して動けなくなってしまい
そこへたまたま盗賊団と行動を共にしていた十和が通りかかってアジトへ連れて帰るのですが
伊吹はすっかり弱っていて、十和の腕の中で息絶えてしまうのですが
ここ福士くん、ほんとに泣いてた!目元が潤んでいるの見えました…現代劇役者やねぇ。
そこへ菖蒲さんが花道のスッポンからゴウンゴウンと登場して
伊吹を連れていってしまいます。やめて~。
この歌舞伎はガクッと亡くなる人が少ないね…。
その頃、一馬は盗賊団の駆け抜けていった村で十和の落とした鑿を拾ってあれ、これは…ってなります。
鑿だけで伝わる友情(笑)。

とある工房に侵入した盗賊たちと十和、物色していると主人の仏師・九龍さんに見つかってしまい
双葉さんたちは逃げるんだけど、十和は工房にあったお地蔵さまにキュン!ときちゃって
その場に立ちつくしてしまいます。
それはむかし名もない仏師が民衆のために彫り、民衆が愛してきたお地蔵さまとのこと。
「おまえさんか、仏像壊して回ってるの」「そうだよ」「なんで」「だって仏像嫌いだもん」
「嫌いなら放っときゃいい」「放っといたら利用されるし」「わかんねぇ奴だな」
「おっさん誰」「仏師。もと僧侶」「なんでやめた」「言葉で教えることに限界を感じた」とか押し問答して
でもお地蔵様に感動して抱きしめちゃった十和に何やら感じ取ったのか、
九龍さんは鑿をわたして「おまえ、仏師だな。彫ってみろ」とおっしゃる。
お地蔵さまを前にして彫りだす十和の、コーン、コーンと舞台に響き渡る効果音が澄んでいて美しかった。
本当は仏像を彫りたくてたまらないのに、政治に利用されるのが嫌で反発的に壊して回って
どうしたらいいかわからなくなっていた十和の心を、九龍さんはお見通しだったのでした。
はああ~右近さん~(*´ω`*)。
(これが桃の節句のネプリーグでがんばるなっしーとか叫んでたお人でs←やめれ)
で、そうやって十和が留守にしている間に一馬が都の軍隊を率いて盗賊団の村を襲撃し、
首領と名乗り出た双葉さんを斬るように都人から言われるのですが、一馬はやっぱりできなくて
でも「やれ」「やれ」って責め立てられて(この時点でゆさギャン泣き)、
双葉さんに向けて刀を振り上げたところで、なんと幕が下りてしまいました!ええーー!!

休憩中も興奮おさまらず。あと一幕あるのに胸がいっぱい…。


怒涛の3幕開始。
幕前で「独り言」説明をしていたオババがセリフで九龍と言うのを十和と間違えるハプニングがあり、
ざわつく客席を「ちょっと、待って、仕切り直し!」と鎮めたのですが結局2回目も間違えて
吾平がツカツカやって来て「九龍か十和かはっきりしろよ何やってんだよ」と一喝(笑)。
オババが「うるさいね、独り言みたいな説明だよ」と言い返すと「よし、台本読みに行こう」と吾平。
客席大爆笑!
お2人とも自然な流れでしたね~。
アドリブなのか台本なのかまったくわからない、他の作品なら本当に間違えちゃってああなるのかもですが
そこはなにせ四代目のスーパー歌舞伎だから。

九龍さんのもとで仏像を作り続ける十和、彫ったものはすべて各地の村に寄進して
どれもすばらしいと絶賛され、わざわざ貴族が聖地巡礼するほどの評判になっちゃいます。
工房の両脇に不動明王と西洋の男性トルソ?っぽいセットが立てられてちょっとすごかった。
あれも十和が彫った設定なのかな…。
一方、一馬は捕まえた双葉さんにぽつぽつと心情を吐露して「あんた迷ってるんだね」と見抜かれて
(笑也さん、猿ちゃんには「お前さん」、蔵さんには「あんた」と呼び分けてて萌えた)、
はっとした表情の中に、自分のしていることに疑問を持っていても引き返せない感が伝わってきて
なんかもう完全にヒロインのポジションだよこれ(ノωノ)。
長邦さんから「摂関家をやっつけるために民衆をまとめたい。いま人気の仏師がいるだろう。
そいつに仏像を彫らせて民衆の心をひとつにしろ」と、もう何度目かわかりませんが無茶ブリされて
ここでやっと2人が再会します!!
しかし…年月は一馬をすっかり変えていたのであった…(なんで小説調←)
仏像を作れと迫る一馬に、十和はきっぱり断って、一馬が「多少の犠牲は仕方ない」と言うと
九龍さんが「お前さん本当にこれでいいと思ってるのか」と諭します。
もうフラグ立ちまくり。あああダメー九龍さん都の軍隊に背中向けちゃダメーと思っていたら案の定、
兵士のひとりが九龍さんに斬りかかっちゃった!ギャー。
九龍さんは十和に「不動明王を仕上げなさい」と遺言します。この歌舞伎初めてのガクッ!シーンきた。
遺言どおり来る日も来る日も不動明王を彫り続けると、やがてその顔は九龍さんに似てきます。
「仏なんてない。仏像に映るのは人の姿だ」と悟る十和。(実はこれも伏線です)

10日後、仏像はできたかと都の軍隊がやって来るのですが
十和がまだ言うこと聞かないので、時子さんが双葉ちゃん殺しちゃいなさいと一馬に命じます。
「殺して!!」って金切り声すごかった…春猿ねえさんどっから声出したの…こわい…(けど笑いが起きてた)
鎧がハートの女王様みたいなド迫力。
そこで十和が「一馬!おまえのための仏像だ!見ろ!」と叫んで厨子の扉をバーンと開け放つと
とたんに厨子から嵐のような風が巻き起こりものすごい量の木屑がブワーーッと宙に飛び出して
客席が一気に紙の渦と化しました!!
役者さんたちと客席真ん中あたりの人たちが紙吹雪をかぶりまくってた。。
「おまえを思い彫り続けたらすべて木屑となった!よく見ろ、仏は拝むことで姿を映す鏡だ。
おれが刻んだのは空だ!おまえの心は空っぽだ!」
ええええええ。
しかしドン引きしてる場合じゃない、これを見た一馬がすっかり感動してしまって
「ごめん、おれが間違ってた。わかってたんだ。おれがやりたいのはこんなことじゃない」
ええええええ。
あ…ありのまま今起こったことを話すぜ…仏師が木屑でヒロイン(違)を改心させやがったぜ…!
何を言ってるのかわからねーと思うがわたしも何が起きたのかわからなかった…←

ちょっとこの辺りから1秒たりとも見逃せませんでした。
展開速すぎ&ぶっ飛びすぎて夢中で観ててまばたきしたかさえ覚えてない。

当然、時子たんは何よ一馬あたしよりその男がいいのね!と言わんばかりに(←爆死)激おこぷんぷんモードで
者ども出会え~と十和と一馬に斬りかかってきます。
あかん春猿ねえさん眉つりあげてすごい形相、ハマリ役すぎて笑いが止まらなかったです。
こわいこわいこわいーー!!
ここの殺陣もワーッとたくさんの人が舞台中を走り回って歌舞伎っぽさ全開だった。

(脚本の前川さんがTwitterで「(稽古中に)自分じゃ何日もかかるような乱戦シーンがあっという間にできた。
歌舞伎俳優すごい。蔵之介さんら現代劇チームがポカンとしてる」とツイートなさってたけど
わたしも思ったんだけど、現代劇と歌舞伎は根本的に動きが違うと思う。
現代劇は動きを一から作っていくけど、歌舞伎は型があってそれをいくらでもアレンジして応用できるから
「こうなってこうなって、こう」と体がスッと動いてできちゃうんだろうな)

しかし多勢に無勢であわや主役ペア大ピンチ、というところでなんか賑やかな音楽がジャーン♪と響いて
セリからドライアイスとともに巨大な光背と強烈な後光を背負って不動明王(右近さん)があらわれた!
「九龍さんの魂が乗り移ったんだ」と十和が独り言説明してくれたよ。えええー。
おお九龍さん…なんというありがたいお姿に…(-人-)←とりあえず拝んだ人
そんなお師匠がものすごい法力パワー(?)で全身からビーム発して
都の兵士たちを一気に成敗して時子さんも厨子に引きずり込んじゃった。
よっしゃ、農民たちの反乱を止めに行くぞ~と意気込む十和&一馬に、不動明王(九龍さん)が
「じゃあオレが送ったげる。飛んでけ☆」と2人に法力を授けてくれて、

きまし!た!!宙乗り!!!

宙乗り写真→こちら
猿ちゃん蔵さん、黒子さんに紐をくっつけられて
「いざ、民のもとへ!」とグイーンと上昇していきましたよ。
思ったより高く上がってうおおおおお、テンション上がりまくりでした↑↑すげーーーっ
場内には紙吹雪が舞い散り、割れんばかりの拍手と歓声。
大向こうもかかりまくって最高に盛り上がってました、あんな興奮味わったことない!
本人たちは「一馬~どうだ~」「いい景色だな~」とか呑気に会話を交わしていましたが
ニコニコしながら上がったり下がったり、前進したり後進したりと余裕たっぷりの猿ちゃんの横で
もう何回かやってるはずですが未だガッチガチな蔵さん、かわいすぎる。
やがて2人はしっかりと手を繋ぎあい、客席に自由な方の手を振りながら仲良く鳥屋に入っていかれました。
いやー宙乗りって生で見ると興奮しますね…(呆然)。

で、いつの間にか花道に移動していた鳴子オババと双葉さん。
オババは宙乗りやりたかったらしくて「4人で飛びたかったのに、前川~」と脚本家さんにキレてた(笑)。
いつの間にか明王さんも引っ込んでて(観客が宙乗りに釘付けになってる隙に降りちゃったのかな)、
オババが「あれ、不動明王は?」とキョロキョロすると双葉さんが「ん?帰っちゃった」
「帰っちゃったって、そんな近所のおじさんみたいな言い方…」「今きっとシャワー浴びてる」
「ビールも好きだったっけ」「うんたぶんビール飲んでる」
言いたい放題(笑)右近さんかわいそう(^ ^;)。
そんなわけでオババと盗賊団メンバーは走っていくハメに。

大詰め。
朱雀門に農民たちを集めた長邦さんが今まさに出撃準備中。
そこへ十和と一馬、盗賊たちも駆けつけて3度目のバトル開始!
クライマックスだけあって宙返りやバク転、ジャンプする吹っ飛ぶなど
皆さん今までのどの立ち回りよりも派手な動きだし
舞台上がヒラヒラの衣装だらけでみんな美しく華やかにヒラヒラしてた。
一番テンション上がったのは弘太郎さんと美麗さんの戸板倒し。
戸板が運ばれて組立られるの見て、え、くる?わたし初めてナマで見れる?くる?ってボルテージ上がって
黒子さんたちが板からパッと手を離したとたん、キターーー!倒れた!!
ツケさんの効果もあってものすごい音がしました。
逆戸板倒しなんてのもありまして、黒子さんと盗賊の皆さんの手で板が組み立てられると
猿ちゃんがひょひょいっと朱雀門上に飛び乗っていった!
すごいすごいなにあの軽やかな身のこなし、名前のとおり猿としか思えない!
そうして門の上で十和と一馬が長邦さんを倒すと
上から豪雪並みの大量の紙の雪がドッサーーーーーって落ちてきて見得切って、大歓声と拍手喝采。
なんじゃこりゃー。
みんなが漠然と考えてる「歌舞伎ってこんな感じ」をお金かけてドヤサ!と出してくれて
うおお歌舞伎やー!という感じでした。(漠然すぎ)
オババの殺陣もありまして、錫杖みたいな棒を振り回してのバトルで相手を倒して見得切って
客席が拍手するとニヤっと笑って親指立ててました。かわいい☆
そして個人的にこの場面の功労賞をツケさんにあげたい。
タタン、タタンタン!!とか、たった1人であの場面に迫力を加えててすごかった。

そんなこんなですべて解決し、一馬は一からやり直す、十和は旅に出ると決意します。
そこへ伊吹、九龍(人間ver.)、十和のお母さんの霊がセリから出現。
伊吹は阿弥陀如来の来迎印、お母さんは千手観音の蓮華合掌印、九龍さんは腕を組んだ印相で
ほおお本当に仏様みたいだった!

幕が下りてからものすごい拍手の嵐。
いつまでもいつまでも鳴り止まず、迎えたカーテンコール(これもスーパー歌舞伎ならでは)で
猿ちゃん、現代劇チーム、澤瀉屋一門ずらりと並んで壮観でしたよ~。
こんなに盛り上がるカテコ初めて、あんなに手が痛くなるまで拍手したのも初めてかも。

あ。カーテンコールで人生初の大向こうをかけちゃいました。猿ちゃんと蔵さんに。
全然意識してなかったんですけど気づいたら「澤瀉屋」「笹倉屋」と叫んでいまして…
会場の雰囲気に呑まれたのかもしれません。
後悔はしてない(´ー`)キリッ☆

観終えてずっと「君と出会った奇跡がこの胸に溢れてる きっと今は自由に空も飛べるはず」が
脳内を回ってた。

空のかけら。
拾ってきちゃいました。十和から一馬への思い。


はああ~すごかった…。大変なものを見せていただきました。
同じ新作でも9月の陰陽師より自由度高くて、笑いもドラマもあって
松井今朝子氏もおっしゃってましたが観念的・内省的なストーリーで
特に十和や九龍さんが何か言うたびに色々考えながら観てた…ような気がするけど
クライマックスがすごすぎてぜんぶ忘れました(笑)。
今回は役者さん全員がとっても輝いてたな~。
現代劇のお3方は歌舞伎初挑戦だったわけで、違和感がないとは言えませんが
それぞれの良さがきちんと引き出されてよかったと思います。
あと、蔵さん男性とのラブは初めてじゃないけど女形とのラブは初めてよね?器用にこなしててさすがです。
澤瀉屋の皆さんはあまり出てない方もいましたが、見せ場もあったしそれぞれのファンは大満足でしょう。
5年、10年経ったらまたどんな風に変わるかな。時間をかけて完成させていってほしいです。

スーパー歌舞伎は苦手と感じる歌舞伎ファンもいるかもですが
わたしは気にならなかったなあ、事前情報でなかみ知っていたせいもあるかもしれませんけど…。
まだ歌舞伎観たことない観てみたい、という方はストーリーもクライマックスも楽しいので
ぜひご覧になっていただきたいです。
客層はカジュアルな服装の方ばかりだったし、若い人もたくさんいたし
戸板返しでおおー☆って歓声上がったけど明らかに歌舞伎座での歓声とは違ったし
(歌舞伎座だとだいたい拍手か大向こうだけ)、
役者や演目のことしゃべってる人も少なかったから割と現代劇ファンがいたんじゃないかと。
筋書売り場で「パンフレットじゃなく筋書っていうんだね」と言ってる親子がいて
おお、新しい客層ゲットしてるじゃないか!と自分のことのように嬉しくなったし、
わたしの隣の席で歌舞伎ファンと思われる老ご夫婦がご覧になってたんですけど
「おもしろかったねえ!」と笑ってらしてやっぱり嬉しくなりました。
千穐楽までまだありますので、ぜひぜひ。
お手頃価格のお席もありますよ!

くるみちゃん!
会場限定のくるみ信玄餅~くるみ入りは珍しい。
他にも限定チョコレートや桜餅、クッキー、お茶、豆、クリアファイル、アクセサリー、
三代目直筆「愛」文字ピンバッジ、佐々木酒造の大吟醸とかありました。
筋書にはメインキャストの衣装写真やインタビューがついてますよ。

さくらさく。
本日のいでたち。春が待ちきれなくて桜柄。

あと、非常に余談になりますけども。
今回の舞台のテーマが仏師と聞いて、真っ先に連想したのは手塚治虫氏の『火の鳥 鳳凰編』でした。
罪を犯し流転しながらやがて仏師となる我王と、我王に腕を斬られながらも政治の世界をめざす茜丸。
十和と一馬はなんとなく彼らに似ている気がしたな…。
もちろん時代背景は異なりますし、両者はぜんぜん別の結末を迎えますけども。
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テーマ : 歌舞伎    ジャンル : 学問・文化・芸術

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ゆさ

Author:ゆさ
猫に熱烈な愛をそそぐ本の蟲
歴史やアートも溺愛中
最近は新幹線とシンカリオンも熱い
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