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双璧の絵師。

2015.03.31 23:56|文化・美術
jakubuso.jpg
国立新美術館のマグリット展の後、サントリー美術館の「若冲と蕪村」展に行ってきました。
1716年生まれの絵師である伊藤若冲と与謝蕪村にスポットを当てるという、
ありそうでなかった展覧会です。
1716年というと尾形光琳やケンペルが亡くなったり徳川吉宗が将軍職に就いたりと
なかなかセンセーショナルな年でもありますな。
その後は火消制度や目安箱が設置されたり、大岡忠相が町奉行に登用されたり
仮名手本忠臣蔵や錦絵や解体新書が爆誕したりと色んなことが待ってるよ!
田沼意次も鈴木春信も平賀源内も円山応挙も喜多川歌麿も十返舎一九もこれから生まれてくるよ!
時代はまだ…始まったばかりだ…( ̄ー ̄)ニヤリ

同い年ながら境遇も作風もまるで異なっているのは知っていましたが
ここまで多くの作品を見比べることは今までなかったので楽しく鑑賞しました。
若冲は京都の錦市場生まれの京都育ち、
蕪村は大阪生まれで42歳のときに京都の四条烏丸へ移住しているんだよね。
2人とも本格的に花開いたのが40代だったり「若冲」「蕪村」と名乗り始めた時期も近いみたいで
そんなところも同時期というのがホワンとするなあ…。
直接顔をあわせた記録は残っていないものの、
2人の共通の友人に円山応挙・池大雅・大典顕常・木村蒹葭堂などがいて
もしかしたら会っているかもしれないっていうのがこう、夢見ちゃうよね。
(大典は相国寺の禅僧で、景和と号していた若冲に「若冲」の号を与えたとされる人です)

入口には若冲・蕪村・池大雅夫妻ほか著名人が絵を寄せた「諸家寄合膳」と「諸家寄合椀」という
何だかすごいアンソロ陶器がありました。
若冲はきびきびとしたタッチの梅図を、蕪村はゆったりした翁自画賛を寄せています。
なんかもうこういうの見ちゃうと「会ってたよ」と言われてるみたいでたまらないねー!!
池夫妻のそっくりな花図に微笑んで、曽我蕭白のねずみ&水仙図にニヤリとしました。
蕪村と応挙合作の水墨画「蟹蛙図」は蛙が蕪村で蟹が応挙なのですが
「これ、応挙?」って聞きたくなるくたいざっくりした蟹で(笑)。
応挙の家は四条にあったので蕪村とご近所さんなわけで、つまり若冲ともご近所さんだよ!
顔を知らなかったとしても絶対ニアミスしてるって思っちゃうし
会ってた記録はないよ!でもこんな近くにいたよ!とかもう、どうしろと妄想しろと??(落ち着け)
京都画壇まじあなどれない。

若冲の作品は「雪中雄鶏図」や「糸瓜群虫図」を始め、
ニワトリや虫、梅、野菜、オウムほか動植物のオンパレードです。
カラフルで緻密な鶏、ほんま手抜かないというか手の抜き方知らないんじゃないかっていうくらい
数ミリ単位まで描きこまれてて、ちょっと待ってちょっと待ってお兄さんどんだけ凝るのっていう。
ろくにプロの指導受けなかった人間マジけしからんな!いいぞもっとやれ(✿´ ꒳ ` )
オウムちゃんは例によってきれいな飾りとともに鎖につながれて首をかしげていて
ほんと羽毛のひとつひとつまでふわふわ感が漂っていて触ってみたくなる…。
墨画の「寒山拾得図」は拾得が後ろ向きで、寒山がニッコリ微笑んでいます。
この2人はだいたい笑って描かれるけど、目が三日月になっているのは珍しいなあ。
「雷神図」は持ち物の太鼓を追いかけて空からまっさかさまに落ちてきた雷神の水墨画で
目を回しているみたいな姿がおかしくて笑ってしまう。
太鼓には若冲が牡丹や菊の花によく使う、お得意の筋目描きが使われていました。
「乗興舟」は大典と一緒に淀川下りをしたときの景色を長々と描いた拓本で
相変わらず惚れ惚れするような漆黒とぼかし…とても再現できそうもないレベル。
で、若冲ってほかにも版画作ってたんですね!知らなかった!
花鳥版画と題されたシリーズは漆黒の背景にカラフルな動植物が摺られています。
肉筆画とは違い、時間が止まったような一瞬の動きをとらえてデザインした感じで
でも木の葉っぱはちゃんと虫食いになってた(笑)。
これ誰か着物にしてくれないかな~。
葡萄図着物はすでに立命館大学が制作していますが、花鳥版画はすごくモダンな柄になると思う)
「売茶翁像」は若冲や大典が親しかった高遊外という黄檗宗僧の生前の姿を描いたもので
まるでふらりとどこかへ行ってしまいそうな雰囲気がおもしろい。
「六歌仙図」は六歌仙の飲み会の図で(笑)、もうそれだけでも笑えますが
在原業平や大伴黒主が酒の肴に田楽を焼いてるのがさらに笑える。
小町だけむこうを向いているのはご愛嬌かな。
「髑髏図」は本物を見ながら描いたのかと思うくらいリアリティがあって
でも写実的じゃないのは若冲さんだからだな…。
ああもう何から何までかわいいよ、ずっと見ていたい!

禅僧でもあった若冲は仏画も残していますが、やっぱりそこは若冲です。
「五百羅漢図」は波を渡る羅漢たちをいっぱい描いていて、
数えたら本当に五百人いるんじゃないかという気さえしました。
(京都・伏見の石峰寺には若冲がデザインした五百羅漢像の群があります)
「果蔬涅槃図」は大根を釈迦に、周りに集う弟子たちを様々な野菜にしてしまったロックな水墨画です。
何度見ても笑いしか出てこないのですが、ほかの掛軸と違って紙が真っ白で折れ目もなくて
とてもいい状態で保管されていることが感じ取れて、持ち主にそっと感謝。
あ、あと、若冲に道号と僧衣を授けた伯珣照浩の書もあったよー!
伯珣さんは今回展示されている若冲の「猿猴摘桃図」にも賛を入れています。

蕪村も負けずにかわいいです(笑)。
「黄石公・王猛図」は隠士と宰相を描いた図ですが、
上半身裸になって一心不乱にシラミをつぶしている王猛が気の毒だけど微笑ましい。
「飲中八仙図屛風」は飲中八仙という昔からよくある画題を描いたもので
李白や蘇晋や張旭などがヘベレケに酔っぱらっています(笑)。
特に李白の酔っぱらいぶりはひどい、両脇から支えられてやっと立ってる(苦笑)。
自画賛「涼しさに」はウサギが臼をついている図で
秋田の宇兵衛という人を訪ねた際に描いたそうですが、
宇兵衛の宇を卯と書いてウサギ化してしまっているユーモアにほのぼのしました。
「奥の細道図巻」はイラスト入り奥の細道って感じで、芭蕉の文章に蕪村が絵を添えています。
わたしが見た日は"行く春や鳥啼き魚の目は涙"の場面が開いてあって
「人々は途中に立ち並びて後ろ影の見ゆる間ではと見送るなるべし」に添えられた絵は
芭蕉と曾良が去っていく姿を多くの人が見送っている味わい深いものでした。
蕪村は芭蕉に強い憧れを持っていて(芭蕉が大坂で亡くなっているのも影響ありそうだな…)、
若い時には東北を行脚してまわる奥の細道旅行を敢行していまして
その記憶も元になっているかもなあ。
92年ぶりに見つかったという「蜀桟道図」の霞がかった山々が美しくて
晩年でもこんなに元気に絵を描いている蕪村がすごくいとしくなりました。

2人が生きた江戸中期は清から沈南蘋(南画家)が渡来し華麗な絵を残して去って行ったため
南画がブームになりまして、2人も少なからず影響をうけたようです。
沈南蘋の「柘榴群禽図」はバラと柘榴の根元にカラフルなつがいの鴛鴦がいて
若冲ほどの強烈さはないんだけどすっきりと色鮮やかで好き。
全面に舞う鳥たちは蕪村の「枯木叭々鳥図」に影響を与えたのですな…。
李厳「花下遊狗図」のコロコロした子犬たちも蕪村が「仔犬図襖」の参考にしたと思われます。
伝李公麟「猛虎図」はギョロ目がものすごく印象的で
ほほう、これが若冲が模写した虎図の元絵か!肉球でかいな!と感動したのですが
若冲はさらに色彩を強くして目とか体毛とかを強調させてしまっていたのを思い出した(笑)。

吹抜け展示室にあった若冲「象と鯨図屏風」「蔬菜図押絵貼付図屏風」と、蕪村「山水図屏風」が
ほんとにもう!
若冲の白象と黒鯨は何度も画集で見ていますが実物を見るのは初めてで大興奮。
あぁあの象の尻尾があの鯨の潮吹きがっ!目の前にっっ!
パオーと鳴き声が聞こえてきそうな象の鼻先がくるんと巻いているのがかわいいし
ザブーンと波音が聞こえてきそうな波濤もやっぱりくるくる巻いてるし
ほんとデザイン性高くてかわいい。
蔬菜図はかぶや瓜、蓮根、大根、里イモなどの野菜がごろごろ描いてある水墨画で、
野菜の匂いとか味とか重たさまで伝わってくるような大胆で細かくもある絶妙なタッチに感動した。
(「胸の内の奇を描いた」という若冲の言葉も伝わっているそうです)
白象と蔬菜は向かい合っていたので、間に挟まれて幸せいっぱいでした☆
いつかの長沢蘆雪展で龍虎図襖に挟まれたときと同じくらい幸せでしたよ。
山水図は…さっきまで見てきた蕪村はいい具合に肩の力が抜けた人という印象だったのですが
この山水図を見てしまうと撤回せざるを得ない、
銀箔がびっしり貼られた銀色の世界にじわりと浮かび上がる山の神秘。
しかもライティングがすばらしくて、屏風絵って折れ曲がることで立体感が出るのですが
白ライトが当たっていたので遠近感までわかりました!
すげー3Dメガネかけてないのに山が遠くにあって岩や木が手前にあるよ…。
できれば自然光とろうそくの灯だけで見てみたい、どんな風に見えるのかな。

蕪村は1784年に68歳で、若冲は1800年に85歳で亡くなります。
1784年といえば志賀島で金印が発見されて、1800年はアメリカの議会図書館ができた年だ!
さらに大典が亡くなったのは1801年…若冲を見送って役目を果たし終えたかのようですな…。
若冲のお墓は相国寺と石峰寺にあって、相国寺の生前墓は5年前にお参りしたので
次は没後に建てられた石峰寺のお墓に行ってみたい。
蕪村のお墓は先日の京都旅行でお参りしたのですが、とても静かな山の中にありました。
今回の展示で奥の細道画巻を見たので、蕪村が芭蕉庵のとなりで眠りたいと願った理由が
なんかわかりすぎるくらい、よくわかった。

マグリット展は頭の後ろが凝りましたが、若冲と蕪村略してじゃくそん展は出てきたら頭の前が凝ってて
たぶん前頭葉をフル稼働させまくってた。


sakurashi.jpg
現在、ミッドタウンのお店では春や桜をイメージしたスプリングメニューがいただけます。
写真はこの日のランチ。IDÉE CAFÉ PARCの18穀米のミックスサンドイッチに
桜シフォンケーキ・さくらとレモングラスのホットティーのセット。
ホットティーは結構甘くてさわやかな味がしました。

sakuraba.jpg
お土産に買ったサン・フルーツのさくらババロア☆
見てくださいよこの桜の花を閉じこめたゼリーにミルク味のババロア、花びらの器!
販売期間は桜が散るまでという雅なスイーツです。
すごくおいしかったのでまた食べたいけど、たぶん来年になるかな…来年もありますように。


nike.jpg
ミッドタウンガレリア地下には6月1日までサモトラケのニケ(複製)がいますよ☆
マグリット展と同じく新美術館で開催中のルーヴル美術館展の関連展示です。
結構大きくて2~3メートルくらいあるんじゃないかな…。
ニケはいつかルーヴルに本物を見に行きたい。

torayalu.jpg
こちらもゲット。とらやさんの琥珀羹「ルーブルの光・紅」☆
とらやパリ店オープン25周年記念のお菓子だそうで、ルーヴル美術館のガラスピラミッドと同じ四角錘。
フランスのボルドーワインのさわやかな香りと味が楽しめました(*´∀`*)。
お酒飲めなくても食べられるのうれしい。
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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

No title

桜をおいかけて、ちょっと花疲れです。
六本木にはまだ。
なかなか良さそうですね。
ルーブルの光、べたべたして、お茶にはどうかとおもうのですが、
有名な人の青磁の茶碗とよく合いました。
流派によっては硫酸紙を使う様ですね。

Re: No title

> hippopon様

六本木は桜も桜メニューもよかったですよ~。
春を感じますねえ。

> ルーブルの光
食べるときはフォーク使った方がいいと思いますね(;´∀`)
器ってだいじですね。青磁のお茶碗いいなあ^^

おはようございます

やっとコメを書きに来ました~
いや、何って、最後の琥珀羹? すごい、これ食べたい~に大いに反応してしまいました。やっぱり東京は色んなものがあっていいですね。美術館のラインナップも豊富だし、売っているお菓子まで洗練されているし。身近にあれこれあるのが羨ましいです(最寄りの駅(しかもJRとかメジャーじゃない)まで1時間にバスが1本しかない、神戸とは思えない地域住民……)。
さて、若冲ですが……ずいぶん昔に金毘羅さんで「花丸図」がある奥書院の公開時に行ったことがあって、以来ずいぶんたくさん本を購入しました。たまに他の絵に混じって実物を見ることがありますが、こうしてたくさん見ることができるのはいいですね~
あの白象さん、最初、銭湯のタイルのために描いたのかと思いました(^^)←だって、よく富士山とか描いてあるのと似てるなぁと……^^; いや、これはまさに、コンピューター画面の走りみたいなものですよね。すごい発想だと思います。天才って、そういうものなのですね……
何はともあれ、また東京美術散歩、ご紹介くださいね!

それから、別記事のことになりますが、ゆささんちにも桜の木があるのですね~。立派な木です。自分ちに桜があるのって、ほんと贅沢ですよね。毎日の移り変わりを楽しめるんですもの。うちの枝垂れはそろそろ散り初めです。
ねこさんたちもいっぱい遊びに来るし(あ、それは違うお庭か^^;)、ゆささんちのお庭も春爛漫ですね。

Re: おはようございます

> 大海彩洋様

琥珀羹きれいですよね☆一目ぼれでした。
都内は散歩するだけでも色んなものに当たります。見落として後で友達に聞いてグギギ…となることも。。
埼玉の我が家も私鉄最寄り駅まで車で15分かかります(^o^)。

金毘羅さんに若冲たんの絵!!
京都のイメージが強いですが四国のお仕事もあったのは知らなかったです、ありがとうございます。
作品数が多いのでぽろぽろっと見かけること多いですね。まとめて見るとあまりのエネルギーにくたくたになりますが、楽しいです。
> 白象さん
うおお若冲銭湯あったら毎週通いますね(笑)象さん眺めながらお風呂入りたい!

桜は毎年元気に咲いてくれます(^v^)もう葉桜です、早いなあ。
大海さんのお宅の桜も綺麗ですよねっ散ってしまうのさみしいですが、来年も楽しみですね。
> ねこさんたちもいっぱい遊びに来るし
そうなんです毎日猫様たちいらしてくださいます、幸せ癒しゲーム!
放置ゲーで気軽にできるので、よかったらやってみてください^^
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Author:ゆさ
猫に熱烈な愛をそそぐ本の蟲
歴史やアートも溺愛中
最近は新幹線とシンカリオンも熱い
*twitterにも出没なう。→こちら

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