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ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光案内。

  1. 2015/04/24(金) 23:56:15_
  2. 絵本・児童書
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教文館で開催中の佐竹美保さんの展覧会に行ってきました。

佐竹さんはSFやファンタジーの表紙絵や挿絵でご活躍中の画家さんで、
書店で彼女の絵を見ない日はないというくらい、幅広いジャンルの表紙を描いていらっしゃいます。
虚空の守り人、シェーラひめのぼうけん、盗まれた記憶の博物館、勾玉シリーズノベルス版、
ハウルの動く城シリーズ、魔女の宅急便、黒い兄弟、サラシナ、竜が呼んだ娘などなど
大好きなものからまだ読んでなくてタイトル思い出せない本まで様々!
今回はそんな中からダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの本につけた絵と
大伴家持を描いた絵本の原画が見られるとのことでワクワクしながら銀座へ。
(ところで教文館はかつて村岡花子さんが勤めておられた出版社でもありますな)

satakem3.jpg
まずは教文館6階、小さなギャラリーで行われている展示に行きました。
「春の苑紅にほふ桃の花 下照る道に出で立つ娘子」(万葉集19巻4139番)をもとに
奈良時代後期に大伴家持が越中守として過ごした5年間を描いた
絵本『春の苑紅にほふ はじめての越中万葉』の原画展です。
絵本を企画した富山県は佐竹さんの出身地だそうだ。
こちらに少し内容紹介がございますのでどうぞ、絵も見られます)

展示室はちょうど誰もいなくてゆっくり鑑賞できました~。
家持をはじめとする人物がすばらしいし、静謐で美しい風景画にため息しか出なくて
室内をぐーるぐーる回ってしまった。
絵本原画のため文字が入ってない状態で見られたのもよかった^^
鵜飼たちの絵と、家持の妻が桃の花に囲まれている絵が特に美しくて
絵から光があふれ出てくるとでもいえばいいのでしょうか、
松明に照らされた人物と夜の紫色、咲き誇る桃のピンクと薄紅色が
やさしいグラデーションで表現されていました。
あと馬に乗って延槻川をわたる家持が神がかり的なかっこよさで夢に出てきてほしいレベル。

ギャラリーの入口に絵本が平積みされていたので脊髄反射でレジに持ってっちゃったよ、
表紙の家持が優雅で美しい~☆
店員さんに「9階の展示はご覧になりました?」と聞かれたので、これから行きますと答えたら
割引券がいただけました!やっほう。

そんなわけで、9階の「ファンタジーを描く」展へ。(こちらは有料)
satakem1.jpg
「佐竹美保のダイアナ・ウィン・ジョーンズの世界」と題して
佐竹さんがジョーンズさんの本に描いてきた原画の数々が
ご本人のコメントが添えられて100点以上も展示されています。
徳間書店の本だけでも20冊以上のジョーンズ作品に挿絵をつけてらして、
東京創元社や早川書房なども合わせると40冊くらいあるんじゃないかな…。
ジョーンズさんは「世界中の挿絵画家の中で、彼女の絵が一番好き」とおっしゃっていたとか。
わたしもそう思います~ジョーンズワールドは佐竹さんの絵がぴったりだと思う!

こちらは6階の展示とは打って変わってファンタジックな絵のオンパレードです(笑)。
特に広いフロアってわけでもないのですが、人少なかったし作品の間近まで寄れるしで
ゆうに1時間半はいたな~。
画材や紙の種類、主線や色塗り、ホワイトや絵の具のタッチまで
印刷ではわからない部分も見られて感動しました。
グリフィンの年の原画がなんか持ってる文庫の表紙と違う印象がして、なんでだろうと思ったら
原画の群青の空の上にあるピンクの空が文庫では切られて群青だけになっているとわかって
こういうのも原画展示のいいところだなあと思いました。
何より佐竹さんのセンスがすばらしいなって改めて。
ジョーンズさんの物語っておもちゃ箱みたいで色んな要素や小物や伏線やギミックが
ぎゅーっと濃縮されてぐっちゃぐちゃになってるのが魅力なんですけど、
佐竹さんも負けずに詰め込んで描いてますよね。
読み終えた後パタリと本を閉じて、さあ今回の表紙や裏表紙には作中の何があるかな?と
探すのがジョーンズ×佐竹本の醍醐味だよね!
本を楽しんで、「これあれだ」「これもあったー」って絵でも楽しめる。
あと、今回は展示されてないけど挿絵のほかに作品世界の地図なども本に添えてくださるので
ジョーンズさんのファンタジー世界を解説してもらってる気持ちになれます。
しかも「ああ、そうそう、こんなのを想像してたの!」って
わたし(読み手)の想像にどんぴしゃな絵や図を描いてくださるから、余計好きになっちゃうよね。

面白かったのがキャプション代わりに添えられている佐竹さんのコメントたち。
佐竹さんの文章ってあまり読んだことないのですが、
こんなに面白いこと書かれる方だったとは(^ω^)。
ダークホルムの表紙で「豚さんが見ているのは、あなたです」とか
牢の中の貴婦人は「天井から覗いているあなたを女性が見上げた図」とか
七人の魔法使いの表紙には「ジョーンズさんを登場させました」とか
キャットと魔法の卵は「ギー、バッタンと音が聞こえてくる感じ」とか
鬼がいるの表紙で「作中に出てきたバレリーナ人形が大変なことになっています。遊びです」とか
魔法×3の表紙が瓶詰ぎゅうぎゅうなのは読み終えたときの佐竹さんの頭の中だったとか
「わかるわかる」から「なんじゃそりゃ!」まで
制作裏話や佐竹さんが仕込んだ秘密がいっぱいでした。
シリーズものは関連性を持たせることもあって、たとえがクレストマンシーシリーズの4冊は
「魔法使いはだれだで上から下へ、クリストファーで下から上へ、
魔女と暮らせばでぐるりと回し、トニーノで前に飛び出して
魔法がいっぱいでお風呂の水を抜くように真ん中に吸い込みました」そうな(笑)。
魔法使いはだれだの裏表紙に描いた赤ちゃん靴下の絵を
ジョーンズさんが大笑いしてくださったというエピソードが宝物なんですって^^

展示室中央のケースには佐竹さんの机の上の様子が再現されていまして
画材やスケッチブックはもちろん、筆バケツやハサミや拡大鏡代わりのメガネ、
描くための資料群や編集者さんとのやり取りを記したポストイットまであった(笑)。
小さくなって使えない消しゴムや、使い切った絵の具のチューブに針金で手足をつけて
"ケシゴムシ"と名づけてテーブルから逃げ出そうとするみたいにして展示されていたのが
まっくろくろすけみたいでかわいくて、
わーこれ今度やってみよう!って思った(゚∀゚)☆
絵の具はカラーインクや水彩などがありましたが、コピックがあったのが
わたしもコピッカーなので個人的に感動。
『アーヤと魔女』はコピックで塗ったそうです!言われてみれば確かにあの色はコピックだったね。

イギリスやアメリカで出されたジョーンズ作品の原書も展示されていて、
佐竹さんの絵で見慣れている身としてはなんか不思議な感じ…。
佐竹さんとは全然別のシーンを表紙にしている本がほとんどですが
七人の魔法使いのゴロツキの表紙登場率が異様に高くて
ゴロツキは画家にとって面白い題材なのかもしれないなあと思った。
泣きそうになったのが、佐竹さんが「ミステリーズ!」47号に寄稿したジョーンズさんへの追悼文。
わたし発売当初読めなくて、初めてここで読んだのですが
部屋が散らかりっぱなしのクレストマンシーのもとへ
「なんてめちゃくちゃな世界なの!」と言いながらダイアナおばさんが踏み込んでいくくだりは
そうだったらいいなと思っていたことを代弁していただいた気がしてガチ泣きしそうに。
魔法泥棒の表紙コメントに「たぶんジョーンズさんは今頃こんな風に
ファンタジーの世界を旅していらっしゃるのでは」とあって、これもうんうんってうなずきました。
佐竹さんとジョーンズさんは直接会ったことはないそうですが
本を通して十数年おつき合いしてこられたんだなあと年月をしみじみ感じました。

satakem2.jpg
「撮影可能スポット」とイラストつきで展示されていたパネル。
『アーヤと魔女』の挿絵の下絵で、
ベラ・ヤーガの家で奮闘するアーヤが生き生きしています!すごい描きこみ!
近くには佐竹さんお手製のヤーガ人形もありまして、毒々しい色ですがすごくかわいくて
展示室入口にいた田中薫子氏作のボス人形と一緒に連れて帰りたかった。

そしてですね…!
会場の奥には小さなテーブルがあって画材が置かれているのですが
なんのためかというと、佐竹さんご本人が在廊されるためだったりします。
そうですご本人に会える日があるんです!お話できるチャンス☆→こちら
わたしが行った日にもいらっしゃって、有難いことに6階で購入した絵本にサインをいただけて
たくさんお話してくださいました!
さっきの佐竹さんの机の上再現展示にあった豚ちゃん写真は
ダークホルムを描くときモデルにしたそうですが、本当にたまたま巡り合えたもので
「豚が正面向いてる写真がなかなかなくてね~」と、資料さがしのご苦労もしのばれました。
絵は全体を決めて背景から描いていくそうですが、
画材は特に種類で分けたりはせず机に雑然と置いておいて描くときに探すとのことで
うわっそれわたしと同じ…ってちょっとうれしくなった。
「小学校の図工用の絵の具、あれ全然固まらなくて使いやすいよ」などなど
画材についても教えていただいたり。
あと、美術館のお話ができたのがすごくうれしかった!
佐竹さんもよく各地へ行かれるそうですが、特に科博がお好きとのことで
アファール猿人の再現模型(通称「ルーシーちゃん」)によく会いに行かれるとか
ヒカリ展できれいな石をたくさん見たわとか、
医は仁術展にあった解剖の絵がリアルで当時の絵師よく描いたなって思ったとか
新美術館に行きたいとおっしゃったのでマグリット展をプッシュさせていただいたりとか
ものすごく有意義な時間でした…本当にありがとうございました!
教えてもらった六本木の豚料理のお店いつか必ず行きます。

予定の合う方ぜひぜひ行ってみてください~とっても気さくな方でしたよ☆→こちら

クレストマンシーシリーズの部屋にはクロッキー帳が置いてあって
メッセージが書けるようになっていたので思いのたけを書かせていただきました。
佐竹さん、そしてメッセージ書こうとしてうっかり前のページめくっちゃった鑑賞者の方、
日本語おかしい文章があると思いますが生暖かい目でスルーしてやってください。
隣には佐竹さんのお仕事場を撮影したアルバムが置いてありまして、
たくさんの画材や資料に囲まれた机がなんだかハウルの部屋のようで面白かった。
特に資料の山は民族衣装や動物図鑑、科学やドラゴンの本まで
洋の東西を問わずあらゆるジャンルが揃っているのが書名から垣間見られて
こんな本あるんだ!って読んでみたくなったり。
こうした調査と取材を積み重ねて葉っぱのひとつひとつから壮大な景色まで細かく描いてるから
ファンタジー絵も歴史絵も立体感と説得力があるんですね…。
佐竹さんの絵を見ているとキャラや世界が二次元から立ちのぼってくるような気がします。
3Dみたくぽーんと飛び出してるんじゃなく、どちらかというとランプの魔神みたいな
あくまで立ちのぼって空中に留まってるイメージ。
(そういえばジョーンズさんの物語も、魔法がキラキラーって光るだけじゃなく
植物や家具や食べ物など身近なものが魔法で動くことがよくあって
そういう部分も強いリアリティを持つファンタジーとして構築している要素のひとつだと思う)
「窓から見える夕焼け」とコメントがついた写真にほおってため息が出ましたが
「オオスズメバチに驚く人体模型」の写真には大笑いしました。
本当におもしろい方だ~!

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教文館を出たら目の前の松屋銀座がこんなだったのでパチリ。
ミッフィー展が開催中だそうです。かわいい。
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ゆさ

Author:ゆさ
猫に熱烈な愛をそそぐ本の蟲
歴史やアートも溺愛中
最近は新幹線とシンカリオンも熱い
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