散れば咲き散れば咲きして百日紅。

地元の映画館で配給してないうえに都内もそろそろ終了しそうな雰囲気だったので
大急ぎで先週末に映画『百日紅』を見てきました。
今まで一度も映像化されてないのに杉浦日向子さん没後10年の今年にまさか映画になるとは…!
お栄ちゃんや北斎爺ほか個性豊かな人々が自由に動いてましたよ~大画面で観てよかった。
こちらで冒頭6分だけ本編が見られますので興味のある方どうぞ。

この日のランチです。京都のおばんざい。
ほうじ茶ご飯って初めていただきましたけどおいしい(^∀^)。
あと、観た日が5月29日でゴフク(呉服)の日だったので
本当は着物で映画館に行きたかったのですが、当日は雨が降っていたので洋服で行きました。
でもせっかくだし、と帰宅してから着たのがこちら↓

袷なので今の時期着ると暑いですけど、
白地に模様入りなのが映画のお栄っぽかったからこれにしました。
帯も映画にあわせて紫色☆

写真だとわかりにくいですが、
実はおはしょりを作らず紐で裾をたくし上げて帯を適当に結んでます(笑)。
お蔭で襟と裾がぐちゃぐちゃ、江戸の人たちはこんな着付で生活していたのかな…。
外は歩けそうにないなあ、慣れてないし着崩れまくりそう(;´∀`)。
そんなわけで以下、まとまりのない所感書き。ネタバレを含みますので未見の方はご注意ください。
大丈夫な方はクリックでオープン☆↓
原作マンガは短編集なので、たぶんいくつか選んで映像化するのだろうなと思ってたら
4つのエピソードにお猶ちゃんの話をふくらませて繋げた形になっていました。
お母さんの家に百日紅が咲いてたり、燕が飛んだり蚊帳が吊られて季節が感じられたり
両国橋の往来が印象的だったり、離魂病の花魁や仏様の夢を見る陰間が出てきたり
龍や地獄絵が暴れまわったり阿弥陀仏がお栄を踏んづけていったりと、
映像にするとなかなか派手な画面になるエピソードがセレクトされていた。
見事なまでに原作に忠実に再現されていますが、
原作が淡々として多くを語らない作風であるのに対して
映画は色や音がつくので立体感があって、話もわかりやすく練られてるのが特徴だと思う。
北斎がお栄をアゴと呼ばなかったり(お栄は顎長だったので北斎がそう呼んでいたといわれます)、
多吉郎とお政さんが全然出てこなかったり
(初五郎と歌舞伎デートしてた人がお政さんっぽかったけどどうなのかな)、
初五郎がお栄と相合傘で帰るシーンの「文覚だ」ってセリフが「滝行だ」に変わってたりと
ちょこちょこ異なる部分もありますね。
原作お栄はさらりとしているけど、映画お栄はかっこよくて歩いても走っても勇ましくて
すれっからしに見えて情愛に満ちていて、絵を描くときは目の色が深くなったりしてた。
杏さんはアフレコのとき着物で臨んだそうですね、形から入る杏さんかっこいい。
松重豊さんの北斎は渋いオッサン!
ぶっきらぼうで口数少ないけど根っこがどーんとしてて
「おまえは描きっぱなしで始末をしないからいけない」とお栄に注意するのと
小夜衣に手の話をした帰りに「ありゃ唐の物語だ」ってしらばっくれる声色がよかったです。
濱田岳くんの善次郎がヘタレで能天気ですごくハマっていて
ちょっとやりすぎじゃないかしらって思うくらい楽しかった^^
国直がお栄を好きになる設定が足されていて「おおっ」って思ったのと
浅草の鬼灯市に一緒に行くのかわいかったですね。
お栄ちゃん…ところてん食べてってあげてほしかった…(苦笑)。
(その後お栄も芝居小屋で初五郎のデートを目撃してショック受けて帰っちゃった、
団十郎の助六がアニメで見られるのかと思ったけど残念^^;)
初五郎の朴訥としたしゃべり方どなただろうって思ったら筒井道隆さんだったのね、
道理で…セリフぜんぶひらがなに聞こえるわけだ…(爆)。
麻生久美子さん演じる小夜衣がお腹にズシッときましてな、
「その時はその時でござんしょう」の色気と怖さが絶妙でどうしようかと思いました。
花魁ふつくしい…!
吉弥も少年のかわいさと色気がはじけてたね~。
入野くんもインタビューで言っているけど、吉弥は飄々としながら
ふと奥行きのある人物と感じさせるのがいいよね。ギャップもえ。
(艶之くん出るかと思ったけど出なかったね、吉弥が2人分の役割を兼ねていた)
矢島晶子さんと藤原啓治さんの声はすぐわかったよ(´▽`)名前はなくて特に印象に残らないけど
でも声をはっきり思い出せるお役に仕上げているのはさすがでした。
藤原さんの「痛いでしょうね」でちょっと笑いが起きてた。
個人的にMVPをあげたいのは北斎宅のわんこ。キャラデザも仕草もかわいすぎか!
某有名猫と同じく名前はなさそうですが、おめめクリクリして体もコロコロして
子犬だったのが大きくなって年月を感じさせてくれて、あの癒し感は大切~☆
お栄の布団にもぐりこんで一緒に寝るシーン、あったかそうでよかった^^
お猶ちゃんの話は原作読んでても切ない。
今回、オリジナル要素を加えてエピソードが膨らませてあって
姉妹で寛永寺やお茶屋に行ったりする交流がやさしいまなざしで描かれていました。
神奈川沖浪裏の世界を舟で行くお栄ちゃんとお猶ちゃんが素敵にはしゃぐの好き~。
妹がいっちゃった後、空に向かって語りかけるお栄のモノローグに
金魚を見つめるお猶ちゃんの絵が被ってあったかいシーンになっていたね。
あと、パンフレットに乗っていた原監督のインタビュー記事で知ったのですけど
わたし原作マンガはちくま文庫を買って読みまして
文庫の最後に収録されているのは「山童」なのですが、
初版のコミックスではお猶ちゃんが亡くなる「野分」が最後だったそうで…。
そう言われて読むと確かに最終回っぽく感じる。
いつものことですがIGのアニメーションは安定していてきれいでした。
お栄が背をぴっと伸ばして歩く姿かっこいいし、めちゃくちゃに走ってくる善次郎がおかしいし
のーんとした北斎や初五郎の存在感。
火事で火消しの兄ちゃんたちおっちゃんたちが家をぶっ壊しまくるのも迫力あったし
雲間からのぞく龍の爪や屏風を飛び出しかねない地獄絵や蚊帳の中を舞う花魁の首、
山のようにでっかい阿弥陀仏もズーン、ズーンと動いてました。
あ、音もよかったです!両国橋の上を色んな職業の人たちが歩いていく音と
大達磨の絵を描く北斎が和紙を踏む音と
お栄ちゃんお猶ちゃんが冬のおでかけで雪を踏む音が雰囲気ありました。
BGMが時々大音量のロックになるのは最初びっくりしたけどラストまでには慣れた。
背景も細かくて、原作でもぐっちゃぐちゃな北斎の家は匂ってきそうだったし
お母さんの家は風通しがよくて畳に寝ころんだら気持ちよさそうだなあと思いました。
吉原の風景のモデルはたぶん吉原格子先之図じゃないかな…^^
特に印象に残ったのが赤の使い方、目にも鮮やかな百日紅や火事の炎のすさまじい赤。
(「鳶連中が回りを立て切っちまって行き場のなくなった火が一ツ固まりになって
ドッと崩れるときがこたえられねえ!」ってお栄の心の叫びも熱かった)
あ。赤といえば北斎が鍾馗を赤で描いてて「うおー赤だ!」ってハッとしました。
原作はマンガですから白黒で描かれていて、アニメは色がつくからそりゃそうだって感じですが
赤鍾馗の感動は大きかったです。
(赤は魔除けの色、鍾馗は魔除けの神なので
赤絵具で鍾馗を描くことは絵のパワーが2倍になることを意味します)
一部で髪にさす櫛の位置やおはしょりの描写について批判が出ていますが
わたしもたまに気になったかな。
(江戸時代の女性は裾を引きずったまま着るのでおはしょり作りません。邪魔な時は紐でたくし上げる)
お栄ちゃんとお猶ちゃんのお出かけも真冬にしてはかなり寒そうな着物だったのも気になりました。
綿入ってる設定だろうけど、あの格好で出かけたらそりゃ体調崩しちゃうよ…。
善次郎たちが滝夜叉の彫り物を見に行くぞって長屋から出て行ったから
わー国芳出てくるかなって思ったらそれっきりだったので残念~。
ちょっとIG作画の国芳君、見てみたかったね。
ラストシーンは両国橋と隅田川からカメラがぐーっと引いて鳥瞰図になって、
唐突に(ほんと唐突に!)現代の隅田川と両国橋がリアル映像でパッと映ったから
えええええ!って引いた。。
そこに椎名林檎さんのエンディングテーマが被って終幕でした。
わたし何見てたっけってびっくりしすぎちゃって、後半部分しかちゃんと聴けなかったけど。
たぶん「江戸と現代はつながっています」的なメッセージだったんだ。うん。
エンディングクレジットに江戸東京博物館や小布施町北斎館、日光江戸村などの名前があって
太田記念美術館が所蔵する葛飾応為「吉原格子先之図」が映し出されてうれしかった☆
あれまた見に行きたいので展示されないかな。
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