fc2ブログ
  • 2023_09
  • <<
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • >>
  • 2023_11

ゆさな日々

猫・本・歴史・アートなど、好きなものやその日考えたことをそこはかとなく書きつくります。つれづれに絵や写真もあり。


よりそう着物。

  1. 2015/06/18(木) 23:40:48_
  2. 一般書
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
幸田文さんの『きもの』を読みました。
何の気なしに図書館の棚を眺めていて背表紙が目に留まりまして
中身をざっと見て借りて帰って本能のままに一気読みしてしまった。はぁお腹いっぱい。
(* ̄ω ̄*)=3

こちら著者の自伝的小説だそうで
(お父さんのモデルは幸田露伴でお母さんは早くに亡くなられたお母様だと思う)、
舞台が戦前ということもあって読んでるとエーッてなったり
「いやいやいやいやないわ」ってドン引きする部分もたくさんあったけど、
着物描写や生活の知恵のくだりがおもしろくて目からウロコの連続で
へーへーそうなんだ!って何度口走りそうになったかわかりませんでした。
今までなんとなく覚えていた物事に裏付けをしてもらったというか。
このブログをお読みの方はすでにお察しかと存じますが、
わたし生活史とか風俗史とか文化史といったものに果てしないときめきを覚えることが多くて
この本はまさにそんな知識が満載でMy好奇心をパンパンに満たしてくれたわけです。
その物がそうあるのは何のためか、
この時に使うのがこれじゃなくそれなのはなぜかといった事例を
できるだけ多く知りたいといつも思っています。
事例って人それぞれで同じものいっこもないもんね。

着物は着心地!見た目じゃないわ!がモットーのるつ子に心から共感しまくりました。
綿がぎっしり詰まった胴着は肩のところで袖がつまって腕がまっすぐ上に上げられないから嫌い、
よそ行きの着物は重たいし裾長で足にからみついてくるから嫌い、
手拭ゆかたの洗いざらしは軽く、しなやかで自分の思うままになるから好き、
紋羽二重の羽織は着ているか着ていないかわからないほど軽くて好き、
「柄や模様より気持ちのいいのが第一」というるつ子の心情は
なんかもう、わかりすぎるくらいよくわかる…。
わたしも、サイズや着心地の合わない服を着てるとその日1日ブルーですが
ぴったりの服だと自然と元気になるから不思議。
見た目ももちろん大切なので趣味に合ったのを選んで着ているわけですけども、
着ていて気持ちのいい服は人の機嫌も世界の見え方も変えると思っているので
服を買うときは見た目でピンときたら素材を確認して触ってみることにしています。
(あとクリーニングじゃなく洗濯機で洗えるかどうかが大事)
メリンス(毛織物)で肌がかぶれたり、お寺の和尚さんの着物にこっそり手を通してみたり
薬屋さんの掛軸にいる神農像の着物が何でできているか気になったり
結婚して家を出たお姉さんが里帰りに着ている派手な服に目をひそめたり
お葬式のバックヤードで動き回るときも薄汚れた物ではなくこざっぱりした銘仙に割烹着を着たり
震災で崩れた街から帰って来たお父さんの洋服姿に節度を見たり
結婚することになって染めの着物に身を包んだ時になって気づいてしまったことがあったり
様々な場面での様々な服を見たるつ子のファーストインプレッションと思考が
時にさっぱり、時に丁寧につづられるのを追いかけるのが楽しかったです。

るつ子とおばあさんが病気のお母さんのために縮緬の布団を作るときの描写がとってもわくわく。
お古の子ども用の縮緬着物を使って作るのですが、
柄が大柄すぎやしないかと思案するるつ子に、おばあさんが
・布団てものは、大柄な方が上品に見える
・作るのは敷布団だから、どうせ敷布で柄は見えなくなる
・大事なのは寝心地、縮緬の柔らかさがあればすべてよし
というわけで、かつてない派手な布団が出来上がっていくのはとても楽しく感じます。
「布団を新しくするのは嬉しいものだよ」と言うおばあさんのセリフにも首肯。
というか、おばあさんが折にふれて語る着物や家事の知恵のひとつひとつが
経験に基づいて理にかなっているからするりと納得がいきます。
着物についても木綿、毛織、銘仙、絹、いつどの素材を着るか、また何故その着物なのかが
的確に語られるのがとても勉強になって
今後着物着るときはるつ子のおばあさんの知恵を全面的に師匠にしようと思ったくらい!
そしてそれは関東大震災の描写でもっとも顕著にあらわれていたな…。
揺れが収まって真っ先にるつ子へ出した指示が「足袋をお履き」っていうのが
びっくりするくらい説得力あるし、
2人で避難するときお米とドロップを2つの包みに分けるのも
はぐれたときのことを考えているっていうのがもう、リアリティあるなあと思いました。
たくましいおばあさんかっこよす。
(あ。ひとつだけ共感できなかったのはるつ子が痴漢に遭ったときのコメントね。
当時の社会を考えるとそう言うしかなかったんだろうけど、そういうことじゃないって突っ込んでしまった)

るつ子の家がずっとお世話になっていた呉服屋さんがある日大盤振る舞いをして
数日後に店をたたんでいなくなってしまって、
お姉さんが「固いお得意さんだけを呼んでこっそり安売りしたのね」ってぽつりと言ったときに
お店の人にもうちの買い物がいくらか足しになったろうか…と
自分ではどうにもならない理不尽について考えるるつ子がとてもよかったな。
あと、震災で避難しているときにおばあさんをどこかで休ませようと思ったるつ子が
山の手の大きなお屋敷の人へ声をかけたときに
突然、自分は少しだけどお金を持っていた、お金で堂々と交渉する手段があったのだと
元気が出るシーンもあって、それもよかったです。
(ちなみにお屋敷の人はお金を受け取らずに休ませてくれた)
あと、るつ子のお兄さんが震災で炊き出しのおにぎりをこしらえるとき
いちいち手に塩をつけるのが面倒だからと、釜の中へ塩をまいてかき混ぜて
お茶碗で型抜きして作ったというのが頭いいなあと思った。

ラストがちょっと唐突なのですが、巻末の解説によるとこれは連載が止まったためだそうで
できればもっと続きを読んでみたかったです。
まあ、なんとなく想像はできますけど…。


幸田さんは着物エッセイも書いていたと知って『幸田文 きもの帖』を読んでみたら
冒頭から「夏は絶対に洋服へ軍配を挙げます」「洋装に越したことはありません」と書いてあって
うおおおおおこの人本物だ!って思わず両手の拳握った。
こういうことを率先して言ってくださると着物クラスタとしてホッとします、選ぶ自由がある気がして。
続きに「若い和服がいいのはやはり雪と花と紅葉でしょうか」ってあるのも
首が折れるほどうなずきましたよ。
何より「雪と花と紅葉」って言い回しがさ…最高ですね…!
冬と春と秋じゃないんだよ!雪と花と紅葉だよ!!
(ゆさはしゃべり言葉フェチでもあります)
とはいえ、夏に着物をお召しにならない著者では、もちろんありません。
ゆかたを「正装でないことは常識である」としながらも
・糊気を置いて着れば肌を離れて風を入れてくれる
・糊気を落として着れば高原の冷やつく夜気を庇い、肌に添って冷えを防いでくれる
ということから「情けのある着物である」と情緒たっぷりに語っていらっしゃって
こんな風に着物をそばに感じて着こなせたらなあ…とは思うのですが
いざ自分がやってみるとなかなか難しいもので四苦八苦すると同時に
改めて幸田さんのような方への憧れを抱いたりする今日この頃です。

また、幸田さんの娘の青木玉さんも、お母さんの着物の本を書いてらっしゃって
『幸田文の箪笥の引き出し』とかを読んでみると
親子でお着物ライフを楽しんでおられたのが伝わってきます。
(幸田さんは生涯、着物で過ごした方でした)
様々な着物を着た幸田さんの写真も載っていて、飼い猫を抱いた写真がとても素敵だったのだけど
名前が「阪急」といったらしくて、なんか笑ってしまった。


korin7.jpg※クリックで大きくなります
「風神雷神図屏風Rinne」光琳・乾山編その6。5はこちら
家を売って引越しを終えた光琳、乾山の焼き物に絵付をする仕事から始めることにしました。
下絵のアイディアをひねっていると中村内蔵助が訪ねてきます。

内蔵助「こんにちは」
光琳「おや、こんにちは」
内蔵助「二条様の使いで参りました。お庭に窯を開きたいとのことでおふたりとお話されたいそうです」
光琳「へ?窯??」
内蔵助「絵やお能も引き続きご所望だそうですが、さしあたっては窯をと」
光琳「そりゃまた」
乾山「良かったね兄ちゃん、仕事になるしお招きいただけるじゃない、法橋の話もしやすくなるよ」
光琳「………いいな、それ」
乾山「でしょ」

ものは考えよう、な光琳と乾山なのでした。借金で苦労している身には大切なことです(キリッ

乾山が著した『陶磁製方』には「最初之絵ハ皆々光琳自筆」とあり、
焼き物を始めた頃は光琳が絵をつけていたようです。
その後、乾山が作陶と画賛を入れて仕上げていました。

中村内蔵助は京都の銀座役人で、公私にわたり光琳を援助してくれている人です。
また、二条家は藤原摂関家の公卿で
当主の綱平は東福門院の孫の栄子内親王と結婚したことから尾形家とも交流がありました。
光琳は綱平の絵の師となり能や舞も披露し、2人の交流は長く続きました。
スポンサーサイト




テーマ : 読書感想    ジャンル : 本・雑誌

<<第1978回「使用してみたい魔法(超能力)は?」 | BLOG TOP | 香高い珠玉。>>

comment

 
 管理者にだけ表示を許可する
 

trackback




カレンダー

09 | 2023/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

プロフィール

ゆさ

Author:ゆさ
猫に熱烈な愛をそそぐ本の蟲
歴史やアートも溺愛中
最近は新幹線とシンカリオンも熱い
*twitterにも出没なう。→こちら

初めての方はブログご案内をどうぞ。
当ブログはリンクフリーです(宗教、アダルトサイトは×)。
文章や画像の加工、無断転載は禁止。
版権元の企業や団体とは一切関係ありません。

All Rights Reserved.
No reproduction or republication without written permission.
This blog is written only in Japanese.



にほんブログ村 イラストブログ オリジナルイラストへ
にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ


☆気が向いたらクリックお願いします

FC2カウンター

キリ番踏んだ方、報告いただければイラストのリクエストを受け付けます☆詳細はブログご案内をどうぞ。

「小倉百人一首」

問い合わせ先

月別アーカイブ

検索フォーム

« 2023 10  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード