命みじかし歩けよ絵師よ。
サントリー美術館の「逆境の絵師久隅守景 親しきものへのまなざし」展に行ってきました☆
狩野探幽に師事した絵師・久隅守景の画業を紹介する展覧会です。
とても画力があり探幽の姪と結婚した人なので、狩野派関連の資料で必ず名前が出てくるけど
本格的な回顧展が開催されるようになったのは最近だとか。
(一番近いのは石川県立美術館のやつかな?)
わたしも守景については金沢旅行や大倉集古館ほか画集でいくつか作品を見た程度で
ミリしらではないしよく知っているわけでもないですが
彼の娘の清原雪信が大好きで絵もいろいろ見ておりまして(^ω^)。
今回は雪信の作品も出品されると聞いてそれだけを目当てに行きましたら
もののみごとに「ふえぇ…守景パパやべぇ…」ってなって帰って来ました。
いつどこでどのようにドボンするかわからないそれを我々の業界では沼と呼びます。油断大敵。
まずは狩野派らしく大きな屏風から。
今回の目玉である四季耕作図は旧浅野家本と旧小坂家本の2種類がありました。
農家の春夏秋冬を中国の風俗で描いた屏風で
畑を耕して作物を植えたり、田植えして稲刈りしてお米をついたりする様子が柔らかい色彩で筆致もやさしい。
大人たちが仕事に励むかたわら子どもたちが遊びに興じていたり
犬たちがケンカしていたり野に雉の一家がいたりして
ブリューゲルやミレーの絵みたいな、のどかな田園風景という感じ。
雨が降ったら狭い小屋に人々がぎゅうぎゅう詰になってるのおもしろい(^ω^)。
鷹狩図屏風は武家が秋冬に行う小鷹狩・大鷹狩の様子で
鷹を放って丹頂鶴や雉を追いかけたり、餌をつかまえたり、1日が終わってあくびしてる人がいたりと
こちらもかなり自由な人々の姿が見られます。
耕作図とはうって変わり濃い色彩で、屏風の中央に立派な鞍を積んだ白馬もいるので
武家(加賀藩前田家?)からの注文ではないかと言われているとか。
(鶴のような鳥も当時は許可を得た大名でないと捕まえてはいけない)
賀茂競馬・宇治茶摘図屛風は大倉集古館の展示で見て以来、2年振りの再会。
平等院鳳凰堂の屋根を遠くにのぞみながら茶摘みをする女性たちも
宇治川のほとりで蓆を敷いて、摘んだばかりのお茶の葉を干す光景もゆったりした空気を感じます。
馬に乗って上賀茂神社の境内を突っ走る騎手はかっこいいし
ごはん食べたりおしゃべりしたり木に登ったりしながら思い思いに見物する人々も
ひとりひとりの行動に個性があっておもしろい。
(そういえば徒然草には賀茂競馬があまりに混んでいるので木に登って観戦するお坊さんが出てくる)
狩野永徳や岩佐又兵衛の洛中洛外図屏風に色んな人が色んなことしてる様子が出てくるのと同じで
守景も屏風の中に様々な人を配置しているな…。
全員顔も着物も違うし、持ち物やしぐさで職業も性格も表現されているから見飽きないしね。
狩野派というと派手な屏風絵や大きな襖絵のイメージですけども
守景は大きなキャンバスに描きこそすれ、派手とは限らないというか
あくまで淡々とシンプルに描く人のような印象を受けました。
たぶん師匠である探幽の影響が強いんだと思う。
人物画や動植物画が…すばらしくてですね…!
ここが一番テンション高かったです、色んなもの見られました^^
梅花雉図の空に描かれてるのは太陽かと思ったら
箱書きに「月雉子」とあるので赤い月なんですね~なかなか見ない例のような気がする。
猿猴捉月図は水面の月を取ろうとするお猿の姿で
絵の中の空に月はなく、猿の手つきで月があることを表現しています。
水の月を取るエピソードで有名なのは李白ですが、猿の故事の方が先なのかな…。
牛乗り天神図という、童子姿の菅原道真が牛に乗った姿の掛軸や
束帯姿の道真を描いた天神図もありまして
これらは守景が加賀に滞在したとき、菅原氏を先祖にもつ前田家のために描いたのではないかとのこと。
山鳥の後ろ姿がかわいらしい「山鶏図」は柿本人麻呂の「あしびきの~」の歌をイメージしたらしい。
達磨が山を越えて来迎する様子を描いた「山越達磨図」は筆さばきが速く畳の跡もみられるため
座敷にて即興で描かれたのではとキャプションにありました。
本来、このテーマで来迎するのは阿弥陀如来であって
守景がそれを踏まえて達磨に置き換えたならこれは戯画でもあるわけで、
ならば注文ではなく即興というのもわかる気がするな…。
(山越え阿弥陀様は杉浦日向子さんの『百日紅』にもお栄の夢にでてくるね)
六歌仙画帖は文屋康秀・壬生忠岑・河原左大臣・藤原伊尹・赤染衛門・能因法師の6人に
それぞれ百人一首の歌を添えられていて
いわゆる六歌仙とはメンバーが違いますが注文主の好みだろうか…。
三船図は、藤原道長が大井川の舟遊びに詩の舟・管弦の舟・歌の舟を浮かべて
それぞれの道に通じた人をそれぞれの舟に乗せたところ
歌の舟に乗った藤原公任がみごとな歌を披露しつつも「詩の舟に乗ればよかった」と嘆くという
大鏡のエピソードを踏まえた絵で、
考えられる絵のパターンとしては3つの舟を描くと思うんですけど
守景は川を前に扇を振る公任の姿だけを描いているんですね。
(あえて多くを描かず構図を大胆に、というと歌川広重のようだ…いや彼の方が後だ)
小野小町図は立ち姿に着物の袖をふわりと上げていて
古今集にある「わびぬれば身をうき草の根を絶えて誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ」という
文屋康秀への返歌を踏まえているそうです。
ふっくらしたおかめさん顔で源氏物語絵巻の人物描写のよう。
それから、サントリー美術館はミッドタウン3Fと4Fが展示室で順路は4Fからなのですが
階段で3Fに降りたら真ん前の展示ホールに「許由巣父図屏風」があって不意打ちすぎて超びっくりした。
うおお許由~~古代中国の人でその聡明さゆえ堯帝から帝位を譲ると言われ断って山にこもって
「耳が汚れた」と川で耳を洗った人ではないか~。
東博に狩野永徳の許由巣父図がございますが守景も描いてたんだね!
永徳は掛軸で全景図、守景は二曲一双で人物をアップに描いてる。
あと、わたしは耳を洗うとこしか知らなかったのですがこの故事には続きがあって
連れていた牛に川の水を飲ませようとしていた巣父は、そんな許由を見て
「汚れた水を飲ませたくない」と立ち去ったとか。
古代中国、なんともストイックな人がいるものです。
(そういえば封神演義で許由は申公豹の青年時代とされてるけどあれは訳者さんの創作でしたっけ…
あと確か兼好も徒然草に許由のこと書いてる)
おもしろかったのが佐野舟橋図という、
藤原定家の「駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮れ」の歌を踏まえた掛軸で
定家が馬に乗って佐野の舟橋と渡しを見に行く様子を絵にした図なのですが。
キャプションに「舟橋と渡しは本来は別の名所」「当時はよく混同されて描かれた」とあって
アチャー(ノ∀`)ってなりました。。
守景も当時の常識から逃れられなかったのだと思うと同時に
ああやっぱりあの時代を生きた人なんだ!的なライブ感もあって何とも感慨深いです。
あ。肝心の絵は定家と馬、景色をシンプルに表現していて
飽きずに見ていられるタイプの絵だと思いました。
はーここまで多彩な画家だったとは守景…。
狩野派に習った人だから当たり前っちゃ当たり前ですが
風景から動植物まで一通りのものは描ける人だったんだなと。
これだけの能力を持った人だから、色々あって探幽のもとを離れて加賀や京都へ行っても
まったくブレないというか、むしろさらに能力発揮できたのかもしれないな。
会期中の展示替え回数がハンパないので作品数も多そうだし
もっと研究がすすんで色々わかったらいいなあ、まずは生没年から^^;
そして本来の目的(笑)の雪信☆
一対の龍図の迫力がまさに狩野派のそれで
闇と暗雲の中から浮かび上がってくる龍の頭や爪を水墨だけで表現してて
かすかに吐く炎には朱も使われているとのことです。いやあ大迫力。
小野小町図は青年・中年・老年の小町を化粧と服装で描き分けた3幅の掛軸で
お父さんの小町はふっくらしてるけど雪信の小町はシュッとすっきり顔で凛々しい。
牧童図は牛のかたわらで笛を吹く童子の絵で
これよく見る題材ですね、森鷗外も確か絵に描いていたはず。
足葉達磨図は、その昔達磨がインドから中国へ渡ってくるときに
長江へ芦の葉一本を浮かべてそれに乗って渡って来た故事を踏まえている絵で
わたしこの故事の絵は、鈴木春信の美少女達磨の絵で知っているだけで
実はちゃんと達磨の姿で描かれた絵を見るの初めてでした(笑)グリ目の達磨さんよかった。
弁才天図や劉女図はゆったりとした女性たちですし
男舞図の片袖姿で「大小」を舞う若衆も凛として美しかった。
雪信の絵は夏の女性画家展でも見たし、今年は豊作ですな☆ほくほく(*´∀`*)。
雪信の評価についての展示も。
井原西鶴の『好色一代男』初版本が開いて展示されていて、
島原太夫の衣装は白繻子の袷に雪信の秋の野を描いて公家の和歌を添えたものと書いてあり
雪信が大坂でも知られていたことがわかります。
さらにこの本が出版された1682年が雪信の没年ではないかといわれるとか。
あと壁にあった年譜に、初代岩井半四郎が1695年に「狩野雪姫」という芝居を上演しており
雪信がモデルと書いてありました。
ひええ見てみたい!って歌舞伎公演DBで検索したけど出てこなかったorz
早稲田の演劇博物館DBで検索すると幕末の芝居絵がヒットするので→こちら
それまでは上演されてたみたいけど…。
※クリックで大きくなります
探幽、守景、雪信。
ずいぶん前に室町~江戸木挽町狩野家の系譜をまとめて描いた絵の一部です。
全体図→こちら
探幽は名前のような人っぽく描きたかったというか、髪も肌も色素の薄いイメージがあって
でも別に朝の光に弱いとかじゃなくむしろ朝日に照らされるといっそうきれいに見える、みたいな感じ。
守景は画集を見ていてなんとなく「茶髪のもっさりしたおっさん」の顔が浮かんでそのまま描いたのですが
展覧会に行った後でもそのイメージは変わっていません。
雪信も絵から受けるイメージは、普段からしっかりしてるけど
たまに熱くなると無言で下駄をつっかけて口を引き結んで走り出す人みたいな、
でも自分が何をしているか、その行動がどういう影響をもたらすかはちゃんと理解しているっぽい人。
の、ような気がする。
*ブログ内のイラスト記事一覧はこちらです*
狩野探幽に師事した絵師・久隅守景の画業を紹介する展覧会です。
とても画力があり探幽の姪と結婚した人なので、狩野派関連の資料で必ず名前が出てくるけど
本格的な回顧展が開催されるようになったのは最近だとか。
(一番近いのは石川県立美術館のやつかな?)
わたしも守景については金沢旅行や大倉集古館ほか画集でいくつか作品を見た程度で
ミリしらではないしよく知っているわけでもないですが
彼の娘の清原雪信が大好きで絵もいろいろ見ておりまして(^ω^)。
今回は雪信の作品も出品されると聞いてそれだけを目当てに行きましたら
もののみごとに「ふえぇ…守景パパやべぇ…」ってなって帰って来ました。
いつどこでどのようにドボンするかわからないそれを我々の業界では沼と呼びます。油断大敵。
まずは狩野派らしく大きな屏風から。
今回の目玉である四季耕作図は旧浅野家本と旧小坂家本の2種類がありました。
農家の春夏秋冬を中国の風俗で描いた屏風で
畑を耕して作物を植えたり、田植えして稲刈りしてお米をついたりする様子が柔らかい色彩で筆致もやさしい。
大人たちが仕事に励むかたわら子どもたちが遊びに興じていたり
犬たちがケンカしていたり野に雉の一家がいたりして
ブリューゲルやミレーの絵みたいな、のどかな田園風景という感じ。
雨が降ったら狭い小屋に人々がぎゅうぎゅう詰になってるのおもしろい(^ω^)。
鷹狩図屏風は武家が秋冬に行う小鷹狩・大鷹狩の様子で
鷹を放って丹頂鶴や雉を追いかけたり、餌をつかまえたり、1日が終わってあくびしてる人がいたりと
こちらもかなり自由な人々の姿が見られます。
耕作図とはうって変わり濃い色彩で、屏風の中央に立派な鞍を積んだ白馬もいるので
武家(加賀藩前田家?)からの注文ではないかと言われているとか。
(鶴のような鳥も当時は許可を得た大名でないと捕まえてはいけない)
賀茂競馬・宇治茶摘図屛風は大倉集古館の展示で見て以来、2年振りの再会。
平等院鳳凰堂の屋根を遠くにのぞみながら茶摘みをする女性たちも
宇治川のほとりで蓆を敷いて、摘んだばかりのお茶の葉を干す光景もゆったりした空気を感じます。
馬に乗って上賀茂神社の境内を突っ走る騎手はかっこいいし
ごはん食べたりおしゃべりしたり木に登ったりしながら思い思いに見物する人々も
ひとりひとりの行動に個性があっておもしろい。
(そういえば徒然草には賀茂競馬があまりに混んでいるので木に登って観戦するお坊さんが出てくる)
狩野永徳や岩佐又兵衛の洛中洛外図屏風に色んな人が色んなことしてる様子が出てくるのと同じで
守景も屏風の中に様々な人を配置しているな…。
全員顔も着物も違うし、持ち物やしぐさで職業も性格も表現されているから見飽きないしね。
狩野派というと派手な屏風絵や大きな襖絵のイメージですけども
守景は大きなキャンバスに描きこそすれ、派手とは限らないというか
あくまで淡々とシンプルに描く人のような印象を受けました。
たぶん師匠である探幽の影響が強いんだと思う。
人物画や動植物画が…すばらしくてですね…!
ここが一番テンション高かったです、色んなもの見られました^^
梅花雉図の空に描かれてるのは太陽かと思ったら
箱書きに「月雉子」とあるので赤い月なんですね~なかなか見ない例のような気がする。
猿猴捉月図は水面の月を取ろうとするお猿の姿で
絵の中の空に月はなく、猿の手つきで月があることを表現しています。
水の月を取るエピソードで有名なのは李白ですが、猿の故事の方が先なのかな…。
牛乗り天神図という、童子姿の菅原道真が牛に乗った姿の掛軸や
束帯姿の道真を描いた天神図もありまして
これらは守景が加賀に滞在したとき、菅原氏を先祖にもつ前田家のために描いたのではないかとのこと。
山鳥の後ろ姿がかわいらしい「山鶏図」は柿本人麻呂の「あしびきの~」の歌をイメージしたらしい。
達磨が山を越えて来迎する様子を描いた「山越達磨図」は筆さばきが速く畳の跡もみられるため
座敷にて即興で描かれたのではとキャプションにありました。
本来、このテーマで来迎するのは阿弥陀如来であって
守景がそれを踏まえて達磨に置き換えたならこれは戯画でもあるわけで、
ならば注文ではなく即興というのもわかる気がするな…。
(山越え阿弥陀様は杉浦日向子さんの『百日紅』にもお栄の夢にでてくるね)
六歌仙画帖は文屋康秀・壬生忠岑・河原左大臣・藤原伊尹・赤染衛門・能因法師の6人に
それぞれ百人一首の歌を添えられていて
いわゆる六歌仙とはメンバーが違いますが注文主の好みだろうか…。
三船図は、藤原道長が大井川の舟遊びに詩の舟・管弦の舟・歌の舟を浮かべて
それぞれの道に通じた人をそれぞれの舟に乗せたところ
歌の舟に乗った藤原公任がみごとな歌を披露しつつも「詩の舟に乗ればよかった」と嘆くという
大鏡のエピソードを踏まえた絵で、
考えられる絵のパターンとしては3つの舟を描くと思うんですけど
守景は川を前に扇を振る公任の姿だけを描いているんですね。
(あえて多くを描かず構図を大胆に、というと歌川広重のようだ…いや彼の方が後だ)
小野小町図は立ち姿に着物の袖をふわりと上げていて
古今集にある「わびぬれば身をうき草の根を絶えて誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ」という
文屋康秀への返歌を踏まえているそうです。
ふっくらしたおかめさん顔で源氏物語絵巻の人物描写のよう。
それから、サントリー美術館はミッドタウン3Fと4Fが展示室で順路は4Fからなのですが
階段で3Fに降りたら真ん前の展示ホールに「許由巣父図屏風」があって不意打ちすぎて超びっくりした。
うおお許由~~古代中国の人でその聡明さゆえ堯帝から帝位を譲ると言われ断って山にこもって
「耳が汚れた」と川で耳を洗った人ではないか~。
東博に狩野永徳の許由巣父図がございますが守景も描いてたんだね!
永徳は掛軸で全景図、守景は二曲一双で人物をアップに描いてる。
あと、わたしは耳を洗うとこしか知らなかったのですがこの故事には続きがあって
連れていた牛に川の水を飲ませようとしていた巣父は、そんな許由を見て
「汚れた水を飲ませたくない」と立ち去ったとか。
古代中国、なんともストイックな人がいるものです。
(そういえば封神演義で許由は申公豹の青年時代とされてるけどあれは訳者さんの創作でしたっけ…
あと確か兼好も徒然草に許由のこと書いてる)
おもしろかったのが佐野舟橋図という、
藤原定家の「駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮れ」の歌を踏まえた掛軸で
定家が馬に乗って佐野の舟橋と渡しを見に行く様子を絵にした図なのですが。
キャプションに「舟橋と渡しは本来は別の名所」「当時はよく混同されて描かれた」とあって
アチャー(ノ∀`)ってなりました。。
守景も当時の常識から逃れられなかったのだと思うと同時に
ああやっぱりあの時代を生きた人なんだ!的なライブ感もあって何とも感慨深いです。
あ。肝心の絵は定家と馬、景色をシンプルに表現していて
飽きずに見ていられるタイプの絵だと思いました。
はーここまで多彩な画家だったとは守景…。
狩野派に習った人だから当たり前っちゃ当たり前ですが
風景から動植物まで一通りのものは描ける人だったんだなと。
これだけの能力を持った人だから、色々あって探幽のもとを離れて加賀や京都へ行っても
まったくブレないというか、むしろさらに能力発揮できたのかもしれないな。
会期中の展示替え回数がハンパないので作品数も多そうだし
もっと研究がすすんで色々わかったらいいなあ、まずは生没年から^^;
そして本来の目的(笑)の雪信☆
一対の龍図の迫力がまさに狩野派のそれで
闇と暗雲の中から浮かび上がってくる龍の頭や爪を水墨だけで表現してて
かすかに吐く炎には朱も使われているとのことです。いやあ大迫力。
小野小町図は青年・中年・老年の小町を化粧と服装で描き分けた3幅の掛軸で
お父さんの小町はふっくらしてるけど雪信の小町はシュッとすっきり顔で凛々しい。
牧童図は牛のかたわらで笛を吹く童子の絵で
これよく見る題材ですね、森鷗外も確か絵に描いていたはず。
足葉達磨図は、その昔達磨がインドから中国へ渡ってくるときに
長江へ芦の葉一本を浮かべてそれに乗って渡って来た故事を踏まえている絵で
わたしこの故事の絵は、鈴木春信の美少女達磨の絵で知っているだけで
実はちゃんと達磨の姿で描かれた絵を見るの初めてでした(笑)グリ目の達磨さんよかった。
弁才天図や劉女図はゆったりとした女性たちですし
男舞図の片袖姿で「大小」を舞う若衆も凛として美しかった。
雪信の絵は夏の女性画家展でも見たし、今年は豊作ですな☆ほくほく(*´∀`*)。
雪信の評価についての展示も。
井原西鶴の『好色一代男』初版本が開いて展示されていて、
島原太夫の衣装は白繻子の袷に雪信の秋の野を描いて公家の和歌を添えたものと書いてあり
雪信が大坂でも知られていたことがわかります。
さらにこの本が出版された1682年が雪信の没年ではないかといわれるとか。
あと壁にあった年譜に、初代岩井半四郎が1695年に「狩野雪姫」という芝居を上演しており
雪信がモデルと書いてありました。
ひええ見てみたい!って歌舞伎公演DBで検索したけど出てこなかったorz
早稲田の演劇博物館DBで検索すると幕末の芝居絵がヒットするので→こちら
それまでは上演されてたみたいけど…。

探幽、守景、雪信。
ずいぶん前に室町~江戸木挽町狩野家の系譜をまとめて描いた絵の一部です。
全体図→こちら
探幽は名前のような人っぽく描きたかったというか、髪も肌も色素の薄いイメージがあって
でも別に朝の光に弱いとかじゃなくむしろ朝日に照らされるといっそうきれいに見える、みたいな感じ。
守景は画集を見ていてなんとなく「茶髪のもっさりしたおっさん」の顔が浮かんでそのまま描いたのですが
展覧会に行った後でもそのイメージは変わっていません。
雪信も絵から受けるイメージは、普段からしっかりしてるけど
たまに熱くなると無言で下駄をつっかけて口を引き結んで走り出す人みたいな、
でも自分が何をしているか、その行動がどういう影響をもたらすかはちゃんと理解しているっぽい人。
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